アウディ「地熱発電の八幡平」でツアー実施の訳 地熱発電の厳しい現実とBEVシフトの相関性

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「アウディ・サスティナブル・フューチャー・ツアー」に参加した(筆者撮影)

岩手県八幡平市(はちまんたいし)にある松尾八幡平地熱発電所に「RS e-tron GT」「e-tron GT quattro」「e-tron S」「e-tron Sportback 55 quattro」というアウディの最新BEV(電気自動車)モデルがズラリと並んだ。

アウディジャパンが企画した「アウディ・サスティナブル・フューチャー・ツアー」でのひとコマだ。

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今回このツアーに参加し、岩手県八幡平市が取り組むさまざまな地産地消の試みの現場を巡った。

そこからは、持続可能な地産地消型社会に対する、単なる“綺麗ごと”だけではない多くの課題も浮き彫りになった――。

平安時代の温泉に由来する地熱発電

八幡平市は、2005年に西根町、松尾村、安代町が合併して生まれた。2022年9月30日時点では人口2万4114人、世帯数1万641という比較的小さな自治体だ。

地元出身で一貫して地元行政に携わってきた佐々木孝弘(ささきたかひろ) 市長は、今回のツアーの最後を締めくくる「未来共創ミーティング」で、市の将来像について「農(みのり)と輝(かがやき)の大地」として、農業と観光のさらなる発展を目指す姿勢を示した。

市内の観光スポットとしては、十和田八幡平国立公園、松川温泉、安代りんどう、最近SNSで注目されている「八幡平ドラゴンアイ」、そして安比(あっぴ)高原リゾートがある。1980年代から1990年代にかけて、「APPI」のステッカーを車に貼るのが流行っていたことを知っている人も、いるかもしれない。安比高原リゾートのステッカーだ。

ノーザングランデ八幡平にならぶアウディの最新BEVモデル(筆者撮影)

直近では、2022年8月に英国の名門校「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」が開校し、同校関係者が同市に転居したことで、久しぶりに人口が増加に転じている。

そしてもう1つ、八幡平市で全国的に知られているのが、地熱発電だ。八幡平市の資料によると、平安時代の1062年(康平5年)に松川温泉が発見され、温泉宿「松楓荘」が1742年(寛保2年)に開湯しているという歴史がある。

1955年に当時の松尾村が「保養所建設計画」でボーリング調査を実施。7本を採掘した結果、そのうちの温泉が4本で、残り3本は蒸気のみであることが判明した。

そこで、かつて松尾鉱山の電気技師だった松尾村の沼田宗一村長が、当時日本では事例がほとんどなかった蒸気による発電を提案。これが、この地域での地熱発電の原点となる。

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