アウディ「地熱発電の八幡平」でツアー実施の訳 地熱発電の厳しい現実とBEVシフトの相関性
鈴木准教授によると、日本は地熱発電に対するポテンシャル(潜在的な可能性)として、地熱資源量はアメリカ、インドネシアに次いで世界第3位だが、実際の発電量はアフリカのケニアにも及ばず世界10位に甘んじている状況だという。
なぜ、そうなっているのか。その背景や課題を深掘りしていくと、まずは“国の予算割り当て”が挙げられる。
風向きが変わり新設増へ。しかし…
1966年に松川地熱発電所が誕生して以降、2度にわたるオイルショックを契機として、石油代替エネルギー政策(通称:サンシャイン計画)が1974年に始まり、東北や九州での発電所開発が進んだ。
しかし1993年、このサンシャイン計画は省エネルギー技術の研究開発を目指す「ムーンライト計画」と統合され、「ニューサンシャイン計画」に改組される。これを境に国の地熱開発に対する予算が減少していったという。
現在は、全国で新たな地熱発電所の創設が進んでいる状況だ。それは、2011年3月の東日本大震災をきっかけに、再生可能エネルギーに対する風向きが大きく変わったためである。
ただし、課題も多い。地熱発電所は、計画から実際に発電所が操業を開始するまでに、10年以上もの時間を要するのだ。必要な許認可等を受けながら、地表調査、地下探査・評価、環境アセスメントなどに慎重に対応しなければならないからだ。
その一部は、石油や天然ガス関連での知見や技術や、各種のシミュレーション技術を駆使することで今後、期間が短縮される可能性もあるという。また、このような技術的な側面だけではなく、社会受容性という観点でも課題がある。
地熱発電が可能となる場所の多くが温泉地域の近くで、温泉事業者からの反対により地熱関連の開発が頓挫してしまうことも多いのだ。全国的に見れば、現在も各地の温泉協会は地熱開発に対して消極的である場合が多いという。
また、そうした地域の多くは、人口減少地域である。地熱資源は、地産地消することが最も効率はよいが、利用する人が減ればその利用価値も自ずと下がってしまうため、地熱開発が進みにくいという厳しい現実がある。
先の鈴木准教授は、今後の方向性として、国が一元的に描くエネルギー政策だけではなく、全国の各地域が地熱エネルギーを含めたさまざまな分散型エネルギーの供給・需給システムを「地域住民が多様な価値観を持って、住民自身で決めていくことが必要だ」と指摘する。
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