小室:それは「在宅勤務の隙間時間に少し赤ちゃんのオムツを変えたり、触れたりできていますから育児できています、大丈夫です」という意味ですが、妻から見て「育児」と言えるものではないですよね。妻は睡眠時間を削りながら夜中も2時間おきに授乳して赤ちゃんの命を守っているのが「育児」だと思っていますので、認識に大きな溝がありますね。
日色:耳が痛い。やったつもりになっているだけなのですね。
小室:お手伝い程度の育児ではなく、男性が主体として育児に本気で向き合うからこそ、実は会社の利益にもつながるのです。今、仕事は複数のマルチタスクを同時並行で進めていかなくては成り立たない時代になりましたが、仕事を川上から川下まで一貫してやり切る従来の手法に慣れ親しんできた男性にとってマルチタスクは不慣れです。
しかし自分が主たる育児者となってわが子の命を守ろうとすると、ミルク作り・オムツ替え・掃除・洗濯を同時並行で進めながらタイミングを見て寝かしつけて、寝かしつけに成功したら赤ちゃんを背負ってスーパーに買い出しに行く、とマルチタスク力は格段にレベルアップします。わが家でも、夫は長男が生まれてすぐのころは、ミルクを作ろうとしてやかんを火にかけると、沸くまでそばで見守っていたんですよね。「見ていたら早くお湯が沸いたりしないから、その間に10個くらい家事を並行してやってほしい!」と妻は思うわけで。(一同笑)
日色:若い頃の自分を思い出しました。
小室:夫はその後、ミルクを作りながら、オムツ替えも洗濯もできるようになり、今では朝ご飯作りも、30分でご飯とみそ汁、お魚ともう一品まで作れるようになりました。
日色:驚くべき変化ですね。
家族から応援される会社は離職率が低い
日色:小室さんのお話を重く受け止めた理由として、弊社は社内結婚が多いんです。妻が夫の業務内容を知っているので、
小室:どんなに育児がつらくても「大変でしょ」「休めないでしょ」と理解を示そうとしますよね。
日色:そうなんです。だからこそ男性も育休が取れることを会社の制度として徹底しなくてはならない。
小室:実はなんと、妊娠期から0歳児までの1年間で、妻と夫の愛情度は20%も差が開き(妻側が大きく下がる)、その差は生涯埋まらないことがわかっています。熟年離婚の要因の多くは育児期に始まっていることもわかっています。
この時期に会社が男性の育休取得や、その後の継続した育児参画を積極的にサポートすると、家族からも「こんなに良い会社は他にはないから辞めないほうがいいよ」と支えてもらえるようになります。
育休取得を促進した企業には、国からの助成金もあり、休業中は給与が発生しないので企業側に金銭的負担はありません。取得する社員側も、育休中は給与の67%が給付金で保証され、社会保険料が免除になることも加味すると、手取りの8割以上が保証される計算になります。
さらに、その後の保育園の保育料は、前年の年収に合わせて決まっているため、育休によって給与としての収入は少なかったとみなされるので、保育料が一段安いレンジになりトータルで見たら家計はプラスになるのです。
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