小室:それは言葉にして伝えたのですか。
日色:伝えました。ただし、ダイバーシティを人任せにしてしまう理由も理解できるんです。2018年以前は、売り上げが上場以来の過去最低まで低迷していた時期からの回復期で、経営陣はリカバリーに必死でした。ようやく業績が回復したところに入社したのが私でしたので、客観的に指摘できた面もあるんだろうと思います。
小室:「いくら業績が良くても、ダイバーシティを推進して強いチームを作らなければ、リーダーとして評価しない」と言い切ったところが凄いですね。どの企業も売り上げを上げている部門・役員には弱いので、そこまで言い切れないものです。リーダーにとって売り上げ・業績より、より重要な概念として、ダイバーシティを促進すべきと言い切ったところが素晴らしいです。
日色:前職のジョンソン・エンド・ジョンソン(以下、J&J)に勤めていた時代にマネジャーの育て方や欧米式の組織マネジメントを徹底的に学びました。言うべきことは忖度なく伝えるようにしています。役員側も、はっきりと評価基準を言われたほうが頑張れるし成果が出るのです。
小室:なるほど。組織マネジメントのプロフェッショナルとはこういうことか、と勉強になりました。日色さんが在籍していた2018年にJ&Jは「女性が活躍する会社」で1位を受賞していますから、社内外を問わず、ダイバーシティ推進について相談される機会が少なくないのでは。
日色:そうですね、そういった際に名刺交換すると「ダイバーシティ推進室」「女性活躍推進室」と書いてあるケースが少なくありませんが、こうした特別な部署を設けると、みんなそこに丸投げして自分ごと化しなくなるのが問題だと思っています。
小室:たしかにダイバーシティ推進室は課題を見える化して経営陣に提言はできますが、女性を登用する権限まではありません。それなのに、まだ成果は出ないのかと丸投げされて困っている企業が沢山ありますね。だからこそ日色さんは、「経営が優先順位をあげて、経営トップによる変革を起こす」と意思表示をされたのですね。
日色:はい。当時のマクドナルドは、経営会議メンバーのなかで女性はサラだけでしたが、現在は8人中5人が女性です。女性に限らずさまざまなバックグラウンドを持つ人材が実際に活躍することが成果につながり、強い組織になってきたと実感していただけるはずです。
1カ月間の男性育休が家族の命を救う
小室:2022年4月から男性育児休業が法改正されました。それまでは「男性側が育休取得させてくださいと申し出てくれば、企業は断ってはならない」という法律でしたが、「企業側から、男性本人に育休取得することを打診しなくてはならない」という義務化になりました。御社の取り組みと手応えはいかがでしょうか。
日色:それが実は、育休制度は以前から整えているのですが、男性の育休の取得率はあまり伸びていないのが現状なのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら