星野代表が指摘「コロナ後に向けた観光課題解決」 都市部の「ホテル過剰供給」にも新たな一手

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こうしたインバウンド格差が生じる背景として、まずは国の政策・戦略に課題があるとするのが、星野氏の考えだ。「2030年までに訪日外国人観光客6000万人を達成しようといった数値目標を設定すると、どうしても大都市圏などの集めやすいところに集客しようとしてしまう。国レベルでインバウンド格差をなくすという目標を立て、それに沿って政策・戦略を決めることが大事だ。格差を残したまま一部の地域だけで6000万人を達成しようとすれば大きな弊害が生じ、持続可能ではない」とする。

1つの県ではマーケティング予算を確保できない

では、地方の側では、具体的にどのような対策をとることが可能だろうか。星野氏が着目するのが大都市圏から最も距離があるにもかかわらず、インバウンド訪問率が高い北海道(8.0%)だ。

「北海道は、『道』という大きな単位で予算をまとめて世界に対して情報発信し、集客に成功している。一方で九州は、海外の人から見れば『九州』という1つのエリアなのだが、そこにある7つの県の情報発信は、自県のプロモーションが中心となり、互いの活動が連動していない。

そのため、どの県も世界における認知度を上げていくまでのスケールには達していない。また、大分県が海外向けプロモーションで『大分に来てください』と言ったとしても、海外から大分だけを目的地として集客しようとすることは、市場ニーズと合致しておらず効率的ではない。大分に来てもらうには、九州の他のエリアの魅力も一緒に伝えていく必要がある(筆者注:福岡県の訪問率は8.7% 他県は0.5~3.3%)」

と問題点を指摘した上で、次のようにすべきとする。

「世界で効果的なプロモーションを展開するには、一定額以上の予算が必要であり、1つの県では十分なマーケティング予算を確保できない。九州にある7つの県が一体となり、予算と権限を集中し、九州ブランドファーストで活動できる体制を整えるべきだ」

星野氏が言うような観光関連の予算と権限を集中するための枠組みとしては、地域の「稼ぐ力」を引き出すことなどを目的とするDMO(観光地域づくり法人)があり、各地ではすでに都道府県を越えて連携する広域DMO設立の動きも進んでいる。星野氏も、このDMOの枠組みを活用すべきであるとするが、同時に現行のDMOの問題点も指摘する。

「今の日本のDMOは補助金の受け皿になっている傾向があり、目的達成のために必要な権限が弱く、戦略的なアプローチがとれていないように感じている。各地の観光地には観光協会や温泉組合といったさまざまな観光関連団体が並立し、予算と権限が重複してしまっている。これらの観光団体を統合して予算や権限を一元化して真のDMOをつくり、さらにはアメリカのように、プロ経営者を連れてきてDMOの経営に当たらせることが、地域観光の戦略的なアプローチのためには重要と考える」

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