星野代表が指摘「コロナ後に向けた観光課題解決」 都市部の「ホテル過剰供給」にも新たな一手

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「今のワーケーションは、ホテル側からは一般のお客様と見分けがつかないが、企業申し込みで、このホテルに10人まとめて泊まりますというようなスタイルがとれれば、ホテル側としても、仕事をしやすい環境を提供するといった違うメニューを提供し、満足度を高めることができるはずだ。

また、ワーケーションは気分転換にはいいが、仕事の効率としてはオフィスのほうがいいという意見も多い。それでもなおワーケーション先に出かけていただくために我々が提供できるインセンティブとして、地元との交流ということが考えられる。企業の人たちは自分たちの知見や技術などを地元の人たちに提供する代わりに少しお金をいただくとか、地元のことを学んで帰るといったWin-Winの関係を構築する。こうした取り組みを通じて、地元へのリスペクトも生まれるのではないか」

都市部のホテル過剰供給

最後に、星野リゾートの注目すべき取り組みとして、今年12月に開業予定のリゾナーレ大阪を紹介する。ハイアット リージェンシー 大阪(全480室)の3フロア64室および一部のエリアを改装し、星野リゾートのリゾナーレ大阪として開業させるという計画である。すでに「ホテルの中にホテルが開業」「コラボレーションホテル」といった報道がなされているのでご存知の方も多いかもしれない。

リゾナーレ大阪では「教育」をテーマとしたアクティビティーを提供する。リゾナーレの宿泊客はハイアットのレストラン・プール等の施設も利用可能だ(画像:星野リゾート)

星野氏は同ホテルのコンセプトを「フードコートのようなもの」と説明する。同じ建物内にビジネスユースに強いハイアットと家族連れに強みのあるリゾナーレが併存することで、ユーザーは好みや用途に応じてブランドを選ぶことができるというわけだ。

こうした形態のホテルが誕生する背景には、大阪のホテルの過剰供給がある。大阪のホテル部屋数はコロナ前からすでに供給過剰になり始めていたが、コロナ禍でさらに需給のバランスが崩れた。開発時に想定した部屋数を1つのホテルブランドで埋め切れない供給過剰期や需要減少期には、異なる市場セグメントに強みを持つ2つのホテルブランドがコラボレーションすることで全体のパフォーマンスを高める可能性がある。リゾナーレ大阪のような業態は、こうしたホテル需要の調整弁の役割を果たすものとして、今後注目されるであろう。

さて、旅行・観光産業は今後も我が国の基幹産業の1つとして、成長を促すべきものであることは間違いない。一方で、ここ数年で我々は、感染症の流行だけではなく、ゼロコロナのような外国政府の政策や、国際紛争、自然災害などによって旅行需要が大きく変動するリスクがあることも身をもって体験した。こうしたリスクに対してどのように向き合っていくべきかということも、大きな意味での観光課題である。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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