娯楽作嫌いアカデミー賞「トップガン」候補入れも 一般感覚とズレたエリート主義との批判に危機感

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アカデミー賞にふさわしい貫禄があるかないか、アカデミー会員好みの作品かそうではないか、という概念は、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』がイギリスの戦争映画『1917 命をかけた伝令』を破った時に崩壊した。

そこまで衝撃的ではなかったとはいえ、今年、もっと風格のある『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が、一般受けする『コーダ あいのうた』に負けたのも、その傾向を表す。多様化を進めるために若い人やマイノリティ、外国人を大勢招待し、会員数をほぼ倍増させた今のアカデミーに、昔と同じ”常識”はない。

そういった中では、それこそ『パラサイト 半地下の家族』『コーダ あいのうた』のように、純粋に面白い作品が強くなる。今年公開された作品に、『トップガン マーヴェリック』以上に面白かった作品は、ほかにどれだけあるだろう。

さらに、今年からアカデミーは作品部門に候補入りする映画の数を10本に固定している。2009年、それまで5本だった枠が、最低5本、最大10本まで拡大されたのだが、たいていは7本から9本の間で、10本になった年はない。そこで、「ならばもう10本にしよう」とアカデミーは思い切ったのだ。

娯楽作品にも門戸を開く

このように数を増やす目的は、一般人に愛される商業的な映画が入ってくる余裕を作ること。2009年のルール変更は、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』が候補入りせず、批判が出たことへの対応だった。

『トップガン マーヴェリック』の場合、先に挙げたふたつの予測でいずれも5番目までに入っているところを見るかぎり、昨年までのルールであったとしても、候補入りできたかもしれない。しかし、10本になったことで、そのチャンスがますます増えた。それはアカデミーにとっても嬉しいことなのだ。

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