娯楽作嫌いアカデミー賞「トップガン」候補入れも 一般感覚とズレたエリート主義との批判に危機感
賞狙いの映画がお披露目される秋の主要な映画祭が終了し、今年のアワード戦線が少しずつ見えてきた。デイミアン・チャゼル(『ラ・ラ・ランド』)の最新作『バビロン』や、ウィル・スミスが脱走奴隷を演じるアントワン・フークア監督の実話物『自由への道』など、まだ記者や批評家が見ることができていない映画もあり、今のところダントツのフロントランナーはいない。そんな中にあって、『トップガン マーヴェリック』の作品部門候補入りの可能性が強まってきている。
「エリート志向」「一般観客の感覚とズレている」と批判されてきたアカデミー賞は、従来、娯楽超大作に優しくなかった。史上最高の世界興行収入を稼ぎ、世界を沸かせた『アバター』も、有力視されながら、最後には一般人にあまり知られていない『ハート・ロッカー』に負けている。
『トップガン マーヴェリック』の前作『トップガン』も、候補入りしたのは主題歌、音響、音響効果編集、編集の4部門で、作品、監督、演技など華やかな部門からは無視された。トム・クルーズ自身はキャリアで3度ノミネートされているが、それらの作品は『マグノリア』『ザ・エージェント』『7月4日に生まれて』と、いずれもシリアスなドラマだ。
マーベルが作品部門に食い込んだのは、アカデミーが多様化に向けて努力をしている中で公開された『ブラックパンサー』だけ。あの映画は監督も主演も黒人で、スーパーヒーロー物とはいえ社会的なメッセージを持つ作品だった。
ひと昔前であればスルーされていた
つまり、一般的に言って、『トップガン マーヴェリック』はアワードシーズンと関係のない作品ということ。にもかかわらず、業界メディア『Variety』のシニアエディターであるクレイトン・デイヴィスが今月6日に発表した作品部門予測ランキングで、5位に入っているのである。
これは彼だけの意見ではない。アワード専門サイト『Gold Derby』のニュースレターを見ても、この1カ月の間、『トップガン マーヴェリック』は4番目と5番目の間をうろうろしている。
これらの予測には、なぜ作品が候補入りすると思うのかという理由は書かれていない。しかし、リピーターが大勢出現するほど人々を夢中にさせ、批評家からも高い評価を得て、テクニカル面でも画期的なことをやってみせた『トップガン マーヴェリック』が映画における最高の賞にノミネートされることに対し、異議のある人はいないのではないか。
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