続かないと悩む人は「一貫性の罠」にハマっている あらゆる過去を「伏線」に変える最強の思考法

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10年ほど前から言われるようになったワーク・ライフ・バランスの概念は、その典型であろう。意訳すれば「仕事も大事、家庭も大事。どちらもバランスよく配分する」ということになる。

その背景には、ワーカホリックという言葉に代表される長時間労働や働きすぎの問題、さらには、家事・育児といった家事労働の負担を女性だけでなく、男性の参加を通じて均一化しようとする流れが存在する。

ワーク・ライフ・バランスの概念は非常に重要である。しかし、本来人生は「仕事か、仕事以外か」で語れるものではなく、「仕事も、仕事以外も」含んだものである。それらが影響を与え合いながら自分の中に存在しているのだ。

すべての「行動」を「活動」と捉え直す

そこで提案したいのが、仕事や趣味、生活などの言葉を捨てて、人生で起きるすべての行動を「活動」と捉え直すことである。

『きみの人生に作戦名を。』(日経BP 日本経済新聞出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

仕事も活動。家事も活動。育児も活動。

趣味も活動、習い事も学び直しもすべて活動である。

仕事も、趣味も、生活も、内容によって分類できるかもしれないが、1つの人生の上に存在する活動としては、平等なのである。

このように捉えることによって、無意識のうちに分けてしまっている「仕事と私生活」「本当の自分と偽りの自分」「やりたいこととやらなければならないこと」というラベルを剥がし、両者の境界線を溶かすことが可能となると考えている。

地続きの人生の上にあらゆる活動が乗っており、それらが分離された状態ではなく、有機的に関係しながら統合されていく。そして、個々の活動が人間活動としてカタマリ化していく。その先に、生きざまの輪郭のようなものが浮かび上がってくるのだ。

地続きの人生に目を向ける。そして、らせん状につながる、見えない一貫性の存在に気づく。そこから生まれる自らの進むべき方向を指し示す「作戦名」とともに新たな一歩を踏み出したとき、過去の出来事や行動が伏線として顔を出す。

寄り道ばかりの経験、余計なことばかりをしてきた経験が、人生の奥行きや厚みとして昇華されるのだ。同時に、それは、1つのことだけを行ってきた人には味わえない、人生の醍醐味でもあるように感じられる。

「伏線思考」とも言える9マス思考法を身につけることによって、あなたにもその瞬間が訪れることを願っている。

梅田 悟司 コピーライター・武蔵野大学教授

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うめだ さとし / Satoshi Umeda

1979年生まれ。上智大学大学院理工学研究科修了。広告会社でコピーライターとして活動した後、ベンチャー企業のコミュニケーション戦略の立案を中心とした起業家支援を行う。現在は、武蔵野大学にて、学生起業の支援に加えて、起業家研究を行っている。主な仕事に、ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、リクルート「バイトするなら、タウンワーク。」、Surface Laptop 4「すべての、あなたに、ちょうどいい。」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション・ディレクターなどがある。著書にシリーズ累計35万部を超える書籍『「言葉にできる」は武器になる。』(日本経済新聞出版社)ほか。

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