「わが子は寝返りできない」困る母を待っていた事 生後半年できないのは“普通"じゃないの?

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赤ちゃんの成長が定められたスケジュールどおりに一律に進んでくれればいいのだが、そう簡単にはいかない。赤ちゃん1人ひとりが、独自のタイミングで不意に成長していく。それを他と比べても、なんにも意味はないのだった。

スマホに保存された動画を見返すと、たった1カ月前なのに、なんだか息子の姿が心もとない。ほっぺのお肉の感じや、頭のおハゲ具合。着ている服も今は入らないものだったりする。

アハ体験のクイズみたいに、気づくといつの間にか大きくなっている。ずっとずっと「小さいなあ」と思いながら抱いているのに、体重も身長も生まれた頃の倍になった。低体重で生まれたが、今では無事に成長曲線のど真ん中にいる。

「今この瞬間」の息子を全力で抱きしめたい

インターネットに書かれている「平均的な成長速度」を目にしてしまうと、それに合わせなければと、成長を急かしたくなる。

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でも2カ月前の自分に「その、グーにした手をベロベロ舐める仕草、あと1カ月でサービス終了します」と予告の電話をかけて知らせたいくらい、毎日見せてくれていた仕草を、気づけばやらなくなっている。当たり前すぎて見過ごして、なぜ動画におさめなかったのかと後悔しているかわいい瞬間が、思い返すと山ほどある。

耳の裏の甘いにおいを躊躇なく嗅いだり、太もものやわらかいお肉を揉んだり。今はいつでもできるけど、いつかできなくなってしまう。ずっと赤ちゃんでいてほしいし、早く君と深い話がしたいとも思う。そんな自分勝手な気持ちが混ざってどうしようもなくなり、とにかく今、目の前にいる息子をギュッと抱きしめる。

しり ひとみ 会社員ライター

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しり ひとみ / Hitomi Shiri

才気煥発な企画力と、笑いを巻き起こす文章力で人気を集める。2019年にnote記事「住んでるマンションを退去したら被告になった話」がオモコロ杯で佳作を受賞し、SNSで話題となる。その後、「エキサイトニュース」、「デイリーポータルZ」、「マイナビウーマン」、「LINE MUSIC」など数々のメディアで執筆。ペンネームは「ひとみしり」を並び替えたものだが最近克服しつつあり、「本当に人見知りなんですか?」と聞かれるたびに「すみません」と思っている。本書が初の著書。

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