「わが子は寝返りできない」困る母を待っていた事 生後半年できないのは“普通"じゃないの?

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そんな風にとめどなく、自分に非があるんじゃないか、私のせいで息子が不幸になるのではと、油断するとネガティブな気持ちで心がいっぱいになる。試しにうつ伏せの状態を体験させてみようと、仰向けになっている息子をひっくり返してみるが、この体勢が好きではないようで、すぐに泣いてしまうのだった。

このままではいかんと、私は児童館に息子を連れていき、常駐している保育士の先生に相談することにした。すると開口一番、「寝返りの練習してる?」と言われた。

「寝返りの練習っていうのがあるんですか」

「そうよ〜。無理しなくていいけど、もし心配だったらやってみてもいいかも」

先生はそう言うと、マットで仰向けに寝転ぶ息子の右足をそっと持ち上げ、左側にゆっくり倒した。すると、その勢いで自然に、息子は自分の力でうつ伏せに転がった。人の力を借りたとはいえ、初めて寝返りをしてみせた息子の姿に感激して私は「ワーッ!」と叫んでしまう。

「これを繰り返すと、だんだん赤ちゃん自身でコツがつかめるようになってくるから。よければやってみてね」

そう教えられたその日から、私は暇さえあれば息子の足を持って、グルングルンと寝返りの練習をした。息子も息子で、「おっ、あれやりますか」と、結構乗り気でやってくれる。しかし仰向けに戻すとまた天井を真顔で見つめて、私がグルンと回すのを待っている様子である。寝返りなんて概念はまったくもってピンときていなくて、そういう遊びだと思っているフシがある。

その姿に私は気が抜けてしまい、もう、目の前にかわいい息子が存在しているだけでいいや……と、その日から練習をやめた。

ついに生後7カ月を迎えたある日

そんなこんなで、ついに生後7カ月を迎えてしまった。7カ月なんて、赤ちゃんによってはおすわりもできている頃である。でも相変わらず息子は仰向けで寝転び、ただただ天井を見つめている。この子は寝返りせずに成長する子なのだ、まさか、三十路を過ぎても寝返りしないなんてことはあるまいと自分を無理やり納得させ、半ばあきらめモードでその姿を見守っていた。

生後8カ月が1週間後に迫ったある日。ちょっとトイレ行くねと一言息子に声をかけ、部屋に戻ってくると、そこには、衝撃の光景が広がっていた。

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