「自分たちのリストに基づいて脚本を書いたから、わざわざ題材を探しにいったり費用をかけたりする必要がなかった。(唯一かかったのが)ビデオではなく映画として撮影したことだ。
お金がかかっている映画のように見せたかったから。周囲には7万ドルで制作したと吹聴して、7万ドルでこの映画を売ろうとしたんだ(実際には『エル・マリアッチ』の制作には7000ドルしかかかっていない)」
資金がなくても成功できる
「結局、コロンビア・ピクチャーズに売り込みに行って、公開することができた。サンダンス映画祭で観客賞を受賞したとき、スピーチでこう言った。
『来年はもっと多くの作品がエントリーすると思う。最低限の制作費とスタッフで撮った映画が受賞したなんてことを知ったら、誰もがカメラを抱えて映画を撮影しようと考えるだろうから』
実際、それ以降エントリー作品が急増した。まさにパラダイムシフトが起こった」
●試作品のつもりが…
「(『エル・マリアッチ』なんて)誰も見に来てくれないと思っていた。試験的作品のつもりだったから、スペイン語で撮影したんだ。スペインで公開できれば、って思っていたから。
2、3のシーンをワンカットで撮って、最高のシーンだけを抜き出して、デモリール(売り込みのためのサンプル集)を作ろうと思っていた。それでお金を少し稼いで、次は英語のインデペンデント映画を制作しようと考えたんだ」
「とくに深く考えていなかった。もしこの作品を誰かに公開するつもりだったら、まったく違ったふうに取り組んでいただろう。映画祭に参加するつもりだったら、10倍の制作費をかけただろうし、方々にお金を工面しに行ったかもしれない。
でも実際は、ワンテイクで撮影したものをつなげただけ。フィルム代が高かったから」
「さまざまな制約の中にも自由があった。カメ、バー、農場くらいしか使えないことはわかっていたけど、それさえクリアすれば自由だった」
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