おまけに、自治体によってはそれまで実施していた「県民割」と併用できますよとアピールするところもあり、さらに割引額が増えたり、クーポンが重ねてもらえたりするので、まるでゲームのように「この地域がオトクだ! いやこっちもオトクだ」と、ますます混乱を極めた。
こんなわけで、人気沸騰の自治体や、もともと秋の旅行を予定していた人の分を「旅行支援」の対象に振り向けた結果、一気に枠が埋まってしまった自治体や旅行代理店が多かった。
「トク」を煽れば煽るほど、冷静に判断できなくなる
少し前のマスコミは「10月には今年最多数の値上げラッシュが生活直撃。給料が上がらないのに、負担増は年間7万円超え」なんて騒いでいたはずだ。回転寿司が100円から15円20円上がっても大騒ぎしているのに、その何倍ものお金を使って旅行に行こうとする人がこんなにいるとは。たとえ食費は切り詰めても、旅行に行くプチ贅沢は別財布という人が多いのか。
この不思議さの原因は、「トクする権利の付与」だと考えている。人は、「トクする権利」を与えられると、それを使わずにいられなくなる。
例えば、100円引きのクーポンや新商品の無料引換券がスマホに届くと、無視するのは難しい。つい使おうと買い物に行く。旅行支援も同じだ。誰にでも割引を受ける権利が付与されている。普段あまり旅行に行かない人でも、「あなたも家族も割引になります」と言われると、ならば行ってみようかと浮足立つ。まさに需要の喚起だ。
それに加えて、今回の「受付終了が続出」という報道。のんびり構えていた人も、これで一気に感情を揺さぶられる。自分も使えるはずだった「トクする権利」が、使えなくなるかもしれない。それだけでなく、「自分は使えないのに、すでに予約を取って割引の恩恵を受けた人がいる。ずるい」というモヤモヤ。こっちも厄介だ。
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