なぜ瞬間蒸発「全国旅行支援」は本当にトクなのか 私たちは「トクする権利」に煽られている

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自分が損するだけでも悔しいのに、他人がトクをしたと知るのはもっと悔しい。周囲に「開始当日に運よく予約できた」とか、「以前に予約していた旅行が対象になるとわかってラッキー」と嬉しそうに語る知人がいたりすると、ますます「自分も絶対利用するぞ」と心を固めるだろう。そして、まだ予約できそうなサイトを探したり、旅行代理店に出向く。結果、どんどん残っていた予算枠が消えていく――。

損得勘定は、このように人の行動をも変容させる。今回は平日の方がもらえるクーポンが多いというので、平日予約が好調とか。ずいぶん前にこの案を聞いた際、筆者は「観光地は平日休みの施設も多い。せっかく行っても休みの場合もあるので、そううまくいかないに違いない」と書いた記憶があるが、「損得勘定×行動力」を見誤っていたかもしれない。失礼しました。

裏には東京都民の「外されてきた遺恨」も?

今回の予約瞬殺ぶりの要因として、東京都民の遺恨というか逆襲もあったのではと深読みしないでもない。

中断したGoToトラベルの後継策として、各自治体は「県民割」を実施してきた。最初は県内在住者を割引対象とし、やがて「ブロック割」として近隣県在住者まで割引の範囲を広げた。しかし、長らく東京都民は近隣県からも弾かれ、旅行割引の対象外のままだった。感染者数の多さからやむをえないとはいえ、都民割も始まらず、東京在住者は「いつまで仲間外れにされるのか」と鬱々としていたことだろう。

そこにきて、ようやく全国旅行支援が始まったのだ。これまで割引の恩恵を受けられなかった懐に余裕のある都民が、今回こそはと一斉に予約に動けば瞬間蒸発もするだろう。

思い出してみると、都民割「もっとTokyo」がやっと始まった途端に完売になったこともあった。抑圧されていた分、そのエネルギーはすごいのである。都の人口を考えれば、今回予約を取ったうち相当数を都民が占めたのではないか。

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