「シングルマザーの貧困解決」ひとつの道筋

革新的な取り組みが岩手にあった!

インクルいわての活動を、設立当初から財政面などから支援してきた国際協力NGOオックスファム・ジャパンでプログラム・オフィサーを務める高橋聖子さんは言う。

「インクルいわての行った『包括的就労支援』インクルームが特に優れているのは、『生きていくこと全般』をサポートしたことだと思います。人が困難な状況に陥ると、心身、家族関係、経済的な課題が絡み合い、その方が本来持っている力を出しにくくなってしまいます。絡まりあった課題を解きほぐし、経験豊かなスタッフが寄り添うことで、その方が持つ力を発揮できるようになり、やがては、就職にもつながっていったと思います」

「費用対効果」は非常に高い

キーワードは「生活支援」だ。インクルームは「パーソナル・サポート」と呼ばれるサービスを提供し、子育てや家庭内の悩みを聞き取り、必要な折は支援につなげていった。生活上の不安を出来る限り減らしていくことで、働くことへの意欲が湧いてくる

筆者の手元には、深川さんが執筆した「インクルいわて 中間的就労支援モデル 包括的就労支援事業 報告書」がある。岩手大学の大学院で経済学を専攻し、男女共同参画について学んだ深川さんの力作で、岩手県内の母子世帯の現状や被災後の状況がデータでわかりやすくまとまっている。インクルームの事業紹介に加え、目をひくのは、この事業の費用対効果に関する分析だ。

報告書24~25ページによれば、就労支援事業の総経費は478万1000円。研修生1人当たりに直すと、1カ月11万9000円となる。半年で約71万円、1年間に約142万円だ。一方、同じ地域で35歳と子ども2人のひとり親家庭が生活保護を受けると月額約18万円になるという。平均的な生活保護受給期間7.7年と比べると、1世帯あたり1600万円に上る。

インクルームの事業費用は決して安価ではない。けれど、参加した研修生は数カ月の間に心身状態が回復し、大きく前に進むことができた。最終的に6人中3人が就職でき、ほかの3人も就職活動を続けたり、簿記の資格を取得したりと、社会に出ていくことが困難な状況だった全員が社会参加できるようになった

仮に半年から1年程度の期間で就職されることになれば、生活保護費の節減だけでなく、ご本人とご家族の尊厳、社会への人材面の貢献の点においても、費用対効果は非常に高いと考えられる」という指摘には説得力がある。

インクルームの成功を踏まえ、山屋さんは、こんな目標を掲げる。それは「被災地をシングルマザー包括的就労支援のモデル特区にしたい」ということだ。

「予算は半年で1000万円、1年間で2000万円もあれば足りるでしょう。被災地復興にもつながりますし、被災地で成功すれば、日本全体にとって励みになるはず。岩手県の女性は全国平均と比べて進学率が半分に留まります。政府が掲げる“すべての女性が輝く”社会実現のために、ぜひ、私たちにシングルマザー特区をやらせてほしい。そこから、本当の復興が生まれると思います」。

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