「シングルマザーの貧困解決」ひとつの道筋 革新的な取り組みが岩手にあった!
これらの作業は、実際にインクルいわての運営に必要とされるもので、実務経験として身に付く。テキストに沿ってパソコン操作を習うのに比べると、実践的である。
報酬を払い、履歴書に書ける職歴に!
また、パソコンスキルの中には生活支援を入れて、家計管理のための家計簿付けも習得してもらった。収入が少ないから、面倒だから家計簿はつけないのではなく、少ないからこそ、面倒でないその人にあった方法でおカネの使い方を体得することが、本当の生活再建につながる。
最大の「発明」は、この研修に報酬を払い「仕事」にしたことだ。おカネをもらうことでシングルマザーの自己肯定感を醸成できた上、履歴書の空白を埋めることができ、再就職面接でも有利になった。「研修を有償にしたらよいのでは」と提案したのは、インクルームでスタッフとして働いていた、深川紗絵子さん。
深川さんは、簿記講師の経験があり、これがシングルマザー支援に活かされた。「簿記を習う受講生の中には、資格を取って再就職をしたい、と希望する主婦の方が多くいらっしゃいました。ただ、仕事から離れる期間が長くなると、優秀な方でも、なかなか就職に結びつかないのです。企業が中途採用で重視するのは、資格より直近の実務経験なので……」。
そこで思いついたのが「インクルームでの研修に時給をきちんと払って“仕事”にしてもらったら、就職面接でアピールできるのでは」というもの。実際、研修生たちが就職面接を受けた時は「インクルいわてって、どんな会社ですか」とか「どんな仕事をしていましたか」と尋ねられたそうだ。
インクルームでは、深川さんが簿記を、もうひとりの女性がパソコンを教えた。「わからないことがあったら、何度でも聞いてください」がモットー。安心して尋ねられる優しい雰囲気は、誰にでも持てるものではない。インクルいわて理事長の山屋理恵さんも「インクルームは深川さんの能力と頑張りで、うまくいったと思います」と評価する。
敷居が高いハロワにはみんなで行く
実際、細かいところに工夫が行き届いている。たとえば「みんなでハロワに行く」取り組み。インクルームに通い、スキルが身に付いてきても「ひとりでハローワークに行くのは不安」という研修生がいた。
そこで深川さんは、ハローワークの担当者に事前連絡を入れた上で、スタッフと研修生全員でハローワークを訪問、その場で求職登録や個別面談をしてもらった。その結果、まもなく1人の研修生の就職が決まったという。その後さらに2人が就職、3人が社会参加できるまでになった。新卒でも中途でも、就職活動は不安がつきもの。「気持ち」に寄り添った支援が実を結んだ。
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