「シングルマザーの貧困解決」ひとつの道筋

革新的な取り組みが岩手にあった!

求人情報の探し方もていねいにアドバイスをした。当初、研修生の中には就業時間や職種の希望を狭く設定する人もいた。その結果、ハローワークの求人情報で検索をすると、条件に合う求人がゼロ件になることもあった。

「がっかりされているのを見て、少しだけ、条件を緩くしてみたらどうでしょう?と提案しました」と深川さん。「とりあえず、どのくらいの求人があるか見るだけ見てみませんか」とゆるやかに持ちかけたのだ。たとえば「週3日、1日3時間で土日休み、家から近い仕事」を探しても見つからなくても「土曜日は保育園を利用できるかもしれないから、働けるかも……」などと考えて条件を緩めると、求人が見つかることもあった。

少しずつ生まれる「できるかもしれない」の気持ち

インクルーム事業の企画運営で活躍した深川紗絵子さん

深川さんはあきらめず、コミュニケーションを続けた。「どんな仕事か、求人の中身だけでも、見てみませんか?」「もし、この会社で働くとしたら、何がネックになりますか?」といったように、不安の理由を具体的に一緒に考えていった

もし、パソコンスキルが足りないことが不安なら、今受けている研修で身に付ければよい。もし、勤務日数が多すぎるのが理由なら、まずインクルームに通う頻度を増やして慣らせばいいかもしれない。

元気で自己肯定感の高い人なら、自分の心の中で自動的に処理するやり取りをサポートすることで、少しずつ「できるかもしれない」という気分が生まれてきた。これは、ジェンダー専門家が「エンパワーメント」と呼ぶ支援のあり方だ。

就業継続の支援も丁寧に行った。就職が決まった後、入社する際、不安を訴えていた人には「ちょっとしたエクセルやワードの使い方なら、いつでも質問してください」と伝えた。勤務先の秘密に触れない範囲で就業後もサポートを続けた。

もうひとつ、大事なことがある。対象となったのは、シングルマザーの中でも、すぐに就職をして働くのが難しい人たちだったということ。インクルいわて理事長の山屋さんは「たとえば、東日本震災によって夫と死別した方などは、ショックが大きく、喪失感を癒すのに時間がかかります。すぐに求職活動ができなくても、当たり前です。また就職した後、働き続けていくことが大事なので、そのために問題を解決したり続けていける力をつけていくことが先です」と言う。

また、震災前まで働いていても、震災の影響で収入が減ったり、震災を理由に雇止めにあったりした女性も少なくなかった。

こういう女性たちに、ハローワークで職を探してください……というのは酷であるだけでなく、現実的ではない。やはり、まずは心の回復や生活面での安心確保が不可欠だ。

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