職場にはびこる「意識高い系」という名の病 NHKドラマに人材マネジメントの課題を見た!

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東田:それはこちらの思惑通りですね。ドラマにもイライラしながらツッコんであげてください(笑)

夢は「流行語大賞」、そして続編も?

常見:少し気になったのですが、主人公の春子さんは、会社員として成長したい、結果を残したいという目標があると思います。でも、意識高い系の一条くんは何を目指しているんですか?

河原:難しい質問ですね。これだと正解を言えるものはありませんが、最終回直前でその方向性みたいなものは描かれます。

常見:私も一条くんぐらいの新入社員や若い人に取材をする機会が多いのですが、「この人は何になりたいのかわからない」と思うことがあります。データだけで見ると、ごく一般的な若者は「ひとつの会社に長く勤め続けること」を目指しています。一方で、意識高い系に話を聞くと、「起業家」や「社会貢献」という答えが返ってきますね。中身は漠然としているのですけれど(笑)。

東田:一条くんの名刺にも似たようなことが書かれていますね。

常見:ドラマの中で、一条くんがどんな活躍をするのか期待する一方で、今の意識高い系の子たちには、格好のいい、耳ざわりのいいことだけを目標にするだけじゃなく「目の前の日銭を稼げるようになろう」と言いたいです。

河原:そうですね。ドラマの中だと、春子さんがそう諭してくれる役割だと思います。

東田:脚本の安達さんが言ったように、発言ばかりが派手で、中身はまだまだ未熟な若者をこきおろすだけじゃ現状は何も変わりません。少なくとも、積極的で「有言」だけはできている彼らを「実行」までに持っていく。そんな春子さんみたいな大人が、このドラマを見てくださった人の中から多く生まれればうれしいです。

常見:決して、「若者たたき」のドラマではないということですね。安心しました。期待しています。私もこれがヒットすれば、『「意識高い系」という病2』も出せますからね。

一同:(笑)。

河原:「意識高い系」の特徴も取り入れましたが、特に一条ジョーというキャラクターに注目してほしいです。おそらく、これまでのドラマ史上にないたぐいのキャラクターですので。

常見:今年注目すべきドラマのひとつですよ。私も「意識高い系」という言葉を広めた人間のひとりなので。流行語大賞もねらえるんじゃないかと、若干期待しています。

東田:本放送も楽しみにしていただけると幸いです。

 このインタビューの直後に、番組の放送が始まったわけだが、いやあ、面白かった。もちろん、明らかに「誇張しすぎだろう」と思う部分もあったのだが、今の日本の企業社会がよく描かれていたと感じた次第だ。
 大地真央が演じる社長は、会社に新しい血を採り入れたいと思い、イノベーターを期待し、一条ジョーを採用するのだが、彼と一緒に仕事をする、管理職である課長は当然戸惑う。口だけの意識高い系若手社員、戸惑う管理職、会社を変えたいと思う社長。このバランスが絶妙だ。
 もっとも、こういう意識高い系は存在するものの、実際は就活が厳しいこともあるうえ、将来の不安もあるがゆえに、意識高い系でも、いわゆるゆとり社員、ゆとリーマンでもない真面目な若者が増えていると言われているのだが。このドラマがいい問題提起になることを期待している。
 誤解なきように言うが、「意識が高い」ことは本来悪いことではない。ただ、単に意識が高いだけで、行動が伴わない、目の前のことに取り組まない「意識高い系」がウザいと私は考えているのだ。そして、どの世代も「若者」は奇妙な目で見られるものなので、職場においては彼らを面白がるわけでも、バカにするのでもなく、ちゃんと向き合って育てることが大事だと思っている。もっとも、実際、「意識高い系」はウザいけどな。
 みんなも、このドラマに注目だ。「意識高い系」とその上司・先輩の皆さん、目を覚ましてください!(1999年1月4日東京ドームでの小川直也対橋本真也戦での小川のマイクアピール風に読むこと)
 
常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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