東田:そうなんです。『その男、意識高い系。』ホームページで掲載された脚本担当の安達奈緒子さんの言葉のように、ただ「意識高い系」の若者を批判するのではなく、「人を育てることの大切さ」や「苦労」を中心に描いたつもりです。
春子さんは、時に一条くんの襟首をつかみながら諭すこともありますし、真剣に彼を育てようと悩み、努力もするんですね。彼女はバレー部出身だから体育会系のノリもあります。ただ、そんな真面目な主人公と、どこか冷めていて、ズレている意識高い系の一条くんの熱量がかみ合わないところに、笑いとドラマが生まれた気がしますね。
常見:なるほど。おふたりの話を聞いていると、普通に働く人に見てほしいという気持ちが伝わってきます。
河原:ドラマの試写会を実施したのですが、やはりいちばんウケた層は50代前後の管理職の男性でしたね。
東田:ひとりで見るよりも、誰かと一緒に見るほうが楽しいですよ。そこにビールと枝豆を置くとさらに盛り上がります。
常見:昭和のテレビの香りがしますね(笑)
会社とは、ドラマよりもドラマチックな場所である
常見:先ほど「一条くんは成長しない」と言っていましたが、彼は本当に反省も葛藤もしないんですか?
河原:もちろん、一条くんの人間らしい部分も描きたかったので、落ち込んだり、反省も葛藤もします。ただ普通の人と同じような落ち込み方はしませんね。彼の場合は、普通の人から見ると「こんなことで落ち込むのか」ということで落ち込むように演出しました。
常見:そこは一般的な「意識高い系」とも似ているかもしれませんね。世の中の当たりまえな価値観からズレてるというか。でもなんで彼みたいな人材を社長は雇ったんですかね?
河原:そこも第1話で描かれるのですが、数ある就活生の中で、一条くんだけが特別に見えたんですね。主人公と一条くんが勤める会社には、若い社員や新しい事業が育ってくれないという問題もあって、大地真央さん演じる社長もそういった閉塞した状況を変えたかったんだと思います。
常見:一条くんを、会社を変えてくれるイノベーターと思ったわけですな。
東田:これはウチの会社にも当てはまることなんですけど、採用もなかなか難しい問題ですよね。出来るやつが入社しても、すぐに辞めることもあれば、最初は「バカだな」と思っていたやつが粘り強く会社に居続けて、最終的には成長も結果も見せてくれる。そんな会社あるあるも描かれています。
常見:会社や自分がほしい人材がいつも入ってくるとはかぎらないですもんね。会社員なら誰でも楽しめる内容な気がします。
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