頭が重い株式市場の底流で起きている密かな変化 今までの「行きすぎた悲観」が修正されそうだ

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こうした歴史的なアメリカの個人投資家や機関投資家の悲観(ないし慎重化)からは、今後、市場心理が一段と悪化するというよりは、改善する余地のほうが大きいと予想される。とはいっても、傷ついた心理はなかなかすぐには癒されまい。とすれば、筆者が見込んでいる株価上昇トレンドが明確になるには、辛抱が必要だろう。

多くの方から「馬渕さんは年末にかけて株価が大きく上がると予想しているようですが、これから『ドカン』と上昇基調を強めるきっかけは何ですか」という質問をいただくが、そんなきっかけはあるまい。

もしあったとしても、少なくとも筆者にはわからない。急上昇の前に全力で買って、短期間に大儲けしよう、というたくらみはあきらめて、今からぼちぼちリスク資産を持ち、多少株価が下振れしてもそのまま保有して、年末までずっとぼけっとしていることをお勧めする。

「それでは困る、大儲けしたい」という方は、短期的な相場動向がすべて見通せる専門家の言に従えばよいだろう。

英国市場のゴタゴタの意味は?

さて、このところ主要国で最も市場が騒がしかった国は英国だろう。リズ・トラス内閣が9月23日に大胆な減税策を打ち出したが、その財源が明確でなかったことから国債増発懸念が膨らみ、同国の国債相場が下落(金利が上昇)して株価も売られ、一連の混乱によって英ポンド相場も急落した。

こうした市場波乱の要因としては、政府の経済政策が景気支持的なのに、一方ではイングランド銀行(英国の中央銀行)の金融政策がインフレ鎮静化のため景気抑制的である、という「矛盾」も挙げられる。

そうした混乱を収拾するため、イングランド銀行が9月28日に緊急の国債買い入れ策を打ち出すとともに、トラス内閣も減税策を順次撤回していった。それによりある程度市場は落ち着きを取り戻したものの、経済政策の責任者であるクワシ・クワルテング財務相を更迭するなど、主要閣僚の退任に追い込まれ、ついに10月14日にはトラス首相自身が辞任を表明した。

こうしたゴタゴタは、英国の年金基金を中心として、債券運用に混乱を引き起こしたとされている。ただ、英国だけではなく、アメリカなど他主要国の市場にも悪影響を及ぼした。そうした世界的な波乱の広がりをどう解釈するかだが、債券運用に関して根本的な変化が求められているのだろう。

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