頭が重い株式市場の底流で起きている密かな変化 今までの「行きすぎた悲観」が修正されそうだ

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底流には、今までの「低金利時代」「超緩和(量的緩和を含む)時代」がおおむね(日本を除いて)終わってしまったという面があろう。低金利を支えてきた構造的な要因は多く指摘できようが、低インフレの環境が大きかっただろう。

インフレを長期的に抑制してきたのは、生産や物流のグローバル化であり、それはかつての冷戦の終結がもたらしたものだ。冷戦時は、ヒト、モノ、カネの流れに制約があった。だが冷戦が終わって、同じ製品を最も安く生産できる国に投資資金が流れ込んで生産拠点が立ち上がり、そこに技術を伝え経営する人材が移動して、生産されたものが国境を越えてどこにでも運ばれるようになった。

優秀な人材は、自身が最も高い報酬を得られる職場を求めて他国に移り、その国で企業の生産性を高めて同じものを安い価格で供給できることや、旧来品を凌駕する新製品・サービスを打ち出すことに貢献した。

加えてIT技術の発達が、どの国で最も安く品質が高いものが生産できるのかをわかりやすくするとともに、どこかの国で新製品・サービスが生まれるとその情報があっという間に世界に伝わって、類似の製品などがあまり時差を置かず生産され、競争が激化し、価格抑制圧力がかかった。

こうしたグローバル化に対し、人権問題や領土的野心をめぐっての米中対立や、ロシアのウクライナ侵攻などによって、むしろ世界は分断化に向かっている。だからといって、インフレ率の高騰がどんどん進むとも考えがたいが、以前のような低インフレと、それを背景とした極端な低金利は、もう再来しないかもしれない。

債券運用はなお世界的な混乱が続く可能性も

高金利は、単に「金利の水準自体が高い」ということだけではなく、金利の変動率(すなわち債券価格の変動率)が低金利時代より高まることを意味する。中央銀行ががっちりとゼロ金利と量的緩和を推し進めていれば、長期国債利回りの変動も牽制されていたが、そうした「タガ」が外れるからだ。

一方で、債券運用者については、1970年代や1980年代の債券運用を現場で体験した人は、現役運用者の中には少ないだろう。すると、債券運用のあり方が構造的に変わってしまったのかもしれないのに、それについていけず、戸惑う運用者も多いかもしれない。

こうした観点を踏まえれば、当面は債券運用において世界的な混乱を生じる可能性があり、前述の英国の市場波乱も「低金利で債券価格の変動率が低い時代は終わった」という事実を、世界の運用者にあらためて知らしめたと位置づけられる。

債券市場の波乱は、株式や外国為替などのほかの金融市場も巻き込むだろう。最終的には各市場とも落ち着きどころを見いだすと考えるが、それには時間がかかるかもしれない。

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