頭が重い株式市場の底流で起きている密かな変化 今までの「行きすぎた悲観」が修正されそうだ

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今まで述べてきたように、「主要国の株価がいきなり暴騰を続ける」といった事態は見込みにくい。しかし、実は冴えなく見える株価指数の背景には、明るい動きも見いだすことができる。

アメリカの長期金利である10年国債利回りは、とりわけ強い金利高の材料がないにもかかわらず、また騰勢を強めており、4.2%を超えている(一時は4.3%を上回る局面もあった)。

行きすぎた悲観修正、数カ月大幅上昇の可能性は不変

以前であれば、長期金利がこうした上昇基調をたどれば、NY(ニューヨーク)ダウ30種平均株価が毎日1000ドルずつ下がっていってもおかしくなさそうなところだ。

しかし最近は、株価が下押ししても幅が知れており、時折、株価指数が上昇気味で推移する局面も目につく。この点からは、10月初めごろまでの、インフレによる金利上昇を過度に恐れた「逆金融相場」(金融環境の引き締まりによる株価下落)は、終わりに近いのかもしれない。

こうした金利上昇に対する「株価抵抗力」の理由として挙げられているのは、佳境を迎えている7~9月期のアメリカの企業決算の内容だ。とはいっても、同期の増益率が取り立てて高いというわけではなく、全産業ベースで数%増の着地となるにすぎないだろう。

それでも株式市場が小幅な増益を好感しているのは「投資家の行きすぎた悲観により業績の悪化を見込みすぎたため、事前の不安に比べれば業績が底固い」ということによるものだ。

株価を爆騰させるような好材料が現れているわけではない。ただ、一時の「逆業績相場」(企業業績の悪化による株価下落)の懸念が、「リセッション(景気後退)だ」「スタグフレーション(インフレ下の景気停滞)だ」との大合唱で、行きすぎていたことが示されているのだろう。

このように、「逆金融相場」は終わりつつある一方、「逆業績相場」の到来はまだ早すぎる(連銀の利上げ効果が累積されることにより、2023年は本格的にアメリカの景気が悪化して、逆業績相場が到来すると懸念している)ということだ。これから年末までは2つの逆相場の狭間の「中間反騰」が生じると位置づけている。

「中間反騰」と聞くと、「主要国の株価がこれから小幅に短期間戻るだけ」という印象を受けるかもしれない。だが、筆者は9月12日付の当コラム「壮大な『単なる買い戻し相場』が来るかもしれない」で解説したように、大幅で数カ月続く中間反騰になると予想している。

(当記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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