3カ月育休で「キャリア分断」経験した彼の気づき 有休消化できない日本で男性育休は根付くのか

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男性たちを取り巻くこれらの状況を考えると、今のままでは制度を作ったところで男性育休が普及するとは考えにくい。

しかし、2021年に3カ月の育休を取得した同社クラウド移行部門責任者の赤津克明氏は、「子どもが生まれるというのは大きなライフイベント。自分が変われるタイミングでもある」という。そのうえで勧めるのが「キャリア分断」だ。

女性が産休育休を取得する時も、引き継ぎやその後の人員確保、復職後のことなど、入念な事前準備が必要になる。男性の場合も、長期で休む場合は同様だ。部門長という立場で、かつ3カ月育休を取得するにあたり、赤津氏も半年前から準備を始めたという。

「3月が出産予定日だったので、秋に上長に相談して、年明けから具体的な引き継ぎに入った」(赤津氏)というが、男性の場合、体調に変化がないため、育休に入る直前までパフォーマンスを落とさず、現場に貢献することを第一に考えた。

後任の負担を考える

赤津氏はもともとシステム保守コンサルタントの部門責任者だったが、後任に徐々に引き継ぎながら、年明け以降は既存業務と並行して、短期プロジェクトを担当。そして、復帰後は元の業務には戻らず、新規事業を担当している。

「産休に入る半年前から上長と『どんなことがやりたいか』『新たに今必要なことは何なのか』を話し合った。それで、復帰後は、まったく新しいことを始めることになった」(赤津氏)と言う。

たしかに、2カ月かけて引き継いで、3カ月で戻ってきて、また自分に戻すのは後任への負担が増えるだけだ。

年子が生まれることで、育休を取らないと家庭が立ち行かないというのが、赤津氏が男性育休を取得した発端ではあるが、「人事システムを提供している会社であり、立場的にも今後部下が取得する時のために自分が取っておくのもいい経験になると思った」と言う。

そのうえで「男性が育休を取って、デメリットはない」と断言する。「ただ、男性育休だけを考えていてもダメ。女性の働きやすさと一緒で、多様な人材が働きやすくならないと男性育休の取得率は上がっていかない」(赤津氏)。

待機児童問題の緩和や経済状況の悪化などもあり、女性の継続就業率は、第1子出生年が2010〜2014年の57.7%から、2015〜2019年の69.5%と大きく上昇している(「第16回出生動向基本調査」)。

厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」によると、6歳未満の子どもがいる夫の家事時間は1時間23分、育児時間は49分と、国際的に見ても低水準だ。夫の家事育児時間が長いほど、妻の就業継続率は高く、第2子以降の出生割合も高い傾向にある。

男性育休はもちろん、女性の働きやすさ、介護、本人の傷病休暇など、全ての人たちの働きやすさは同時並行で考えるべき課題と言えるだろう。

乳児の時期はほんのわずか。赤ちゃんは生後1年で体重が倍増するほど成長は著しく、保護者が気力体力を要する時期でもある。この時期を家族で過ごすことを希望する人が性別問わず休みを取れる世の中であってほしい。

吉田 理栄子 ライター/エディター

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よしだ りえこ / Rieko Yoshida

1975年生まれ。徳島県出身。早稲田大学第一文学部卒業後、旅行系出版社などを経て、情報誌編集長就任。産後半年で復職するも、ワークライフバランスに悩み、1年半の試行錯誤の末、2015年秋からフリーランスに転身。一般社団法人美人化計画理事。女性の健康、生き方、働き方などを中心に執筆中。

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