3カ月育休で「キャリア分断」経験した彼の気づき 有休消化できない日本で男性育休は根付くのか

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その大きな要因の1つが職場の空気だ。

アンケートを分析していくと「管理部門や労働組合は積極的に推奨しており、本人もできれば取得したいと思っている。しかし、上長や育休取得者と同部署の人たちは『本人が希望するのであれば仕方ない』と、立場によって意識に大きなギャップがある」(眞柴氏)という。

今回、回答を寄せた企業の約7割は社員数1000人以上の大企業だが、「大手企業の場合、部長クラスは50代がメインだが、この世代の男性は子育てに積極的に関わってきていない人が多い。そのため、男性が休んで何をするのかイメージが湧かない人も多く、人が足りていない時に欠員が出るのは困るという意識が先立つ」(眞柴氏)。

どこも人手不足で現場が回らない懸念があり、本人も空気を読んで言いづらくなっているというのが、実情のようだ。

一方、経営層は平均年齢が60代前半ではあるが、「特に上場企業の場合、人的資本開示を求められるため、イメージアップのためにも男性育休取得にメリットを感じている」(眞柴氏)と言う。

取得期間は?

男性の育休の取得期間はどうか。厚生労働省(「雇用均等基本調査」2018年度)によると、5日未満が36.3%、8割が1カ月未満となっている。6カ月以上取得している人はわずか数%にすぎない。

大企業の回答が多い同社の調査でも、1カ月以内が29.3%で最多。3カ月以内が22.0%、1週間以内が19.5%、1日が11.0%と続いた。6カ月以上取っているのは9.8%ほど。

1週間なら有休で対応できるし、人によっては1カ月以内でも有休消化でまかなえる日数だ。

「人手不足で、法定休暇や有休ですら消化できていない企業も多い。さらに、若い層だとまだ給与はそれほど高くない。育児休業給付金もあるが賃金の67%のため、共働きでない場合、収入面で厳しいという声がある」(眞柴氏)

企業から「育児休暇制度では、給与面で見たら無給、勤怠面では欠勤扱いとなるため、長期取得は避けており、ほとんどの取得者が積立休暇(有給休暇)の取得事由に『育児のため』とある。有休で対応しているのが実態」という声も寄せられている。

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