ただし、当時、日本は家具製品の内含するホルムアルデヒド(有機化合物)量の規制が、世界でもっとも厳しかった。イケアはこれを逆手に取った。日本の厳しい基準が世界的な水準になると想定して、日本向けの基準まで引き上げるべく、商品開発と生産を刷新したのだ。むしろ他社に先駆けた動きとなった。ここで、日本市場での成長の礎ができあがった。
成功の理由は何なのか?
では、なぜイケアは日本市場で成功したのか。理由を3つ挙げたい。
成功の理由①:徹底したコスト管理
ひとつめは、徹底したコスト管理とそれによる安価な商品の実現だ。
イケアには、創業者カンプラード氏の徹底したコスト抑制の文化が根付いている。それはさまざまな試行錯誤を経て、発明された施策も多い。
たとえば平らなダンボールに家具をパーツ単位でコンパクトにまとめる「フラットパック」。イケアの家具は買った客が自分で組み立てるという特徴があるが、これは物流費の削減のために編み出されたアイデアだ。家具を配送時に傷つける回数も削減でき、保険費用も抑制できた。よってイケアのデザイナーは、デザインした家具がフラットパックになったとき、40フィートコンテナに何個積めるかを計算しなければならない。
イケアはいわゆるファブレス企業で、他社の生産ラインを使って商品を仕入れる。その商品もコストの安い国を徹底活用している。これがイケアにとって最も重要な経営戦略のひとつでもあった。
生産拠点の確保に長けていた
かつての冷戦時代に、スウェーデンは中立国だった。その立場を活かして、ポーランドの安価な労働力を活用できた。大量に商品を生産するため、安価な労働力のメリットを享受できる体制は、昔からだった。イケアは東欧の業者からの仕入れを増やした。ベルリンの壁崩壊後に東欧諸国が力を失う中、イケアは生産拠点をアジアに移していった。
同時に仕入れ業者を絞ることで、1社あたりの購入量を増やし交渉することで、価格を引き下げていった。その集中ぶりは徹底しており、業者はほぼ100%イケア向けの商品を生産した。イケアは商品コストを毎年2パーセントほど下げ続けることを経営目標に掲げているほどだ。
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