もちろん、各国ですぐさま現地にあった家具を展開できるわけではない。ただし、イケアは非上場企業であるのを活かし、子会社を設けた国では辛抱強く現地に認められる小売店を目指し試行錯誤した。さまざまな資料を読むと、利益は中長期的な視点で狙い、短期的には追わない。
・成功の理由③:店舗の遊園地化
イケアは家具小売業でありながら、明らかにエンターテイメント型店舗を目指している。「時間消費型店舗」ともいえる。筆者の周囲にも、特別な用事はなく、食事を楽しむためと「なんとなく」イケアに行くひとたちがいる。そこは、買い物する場所ではなく、気づいたら買い物をしていた遊技場に近い。
ディズニーランドは、意図的に地面を窪ませ実態以上に奥行きを見せている。また、建築物は上階ほどサイズを小さくしている。それにより、おなじく実態以上に建物が大きく見えるからだ。そしてわざと道を曲げ距離を長くすることで、滞在時間を延ばしている。おなじくイケアも店内をくまなく歩く構造となっており、かつじっくり見るためには、何度か店舗に足を運ばねばならない。
買いたいよりも「行きたい」
おそらくイケアが目指しているのは、ディズニーランドよりも「行ってみたい遊戯施設」であり、ショッピングモールよりも家族がレジャーとして行ける空間なのだ。店内滞在時間が2時間を超える客層は大半がイケア内のレストランを使用する。
フラットパックを導入しているイケアの家具は、お客自身が組み立てなければならないものの、お客は意外なほど拒絶感を持っていない。もちろん、組み立てることを理解して店舗に向かうからでもあるが、たいていは出費を抑えるためには仕方がないと理解を示している。かつてイケアの経営者は、「イケアをディズニーランドにしたい」と語ったそうだが、まるで組み立てるのを楽しむお客は、イケア家具をおもちゃ屋でかつて買ったプラモデルになぞらえているのだろう。あるいは宝島から持ち帰った戦利品か。
もちろん企業の発展分析とは、いまを切り取った「あとづけ」の理屈付けにすぎない。しかし少なくとも、現時点ではこの3点が強みと私には感じられる。もちろん、これはイケアの発展を手放しに予想しているものではない。
大塚家具は、このようにモデルも考え方も異なるモンスターを相手に、どのように挑むのだろうか。イケアはあくまで低価格帯の客層を狙い、大塚家具は中価格帯以上の客層を狙っているのだ、と大塚家具は言うのだろうけれど――。
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