日本人に優しい政治? どういうことだろう。
「私たちの給料が上がらないのは、外国人労働者が増えたせいです。日本人よりも安く働く人がいれば、企業も日本人の給料を上げようと思わないし、日本人なんていらないってなってしまいますよね」
なんだか雲行きが怪しくなってきたような気がする。ただケントさんがコンビニでアルバイトをしていたとき、日本人スタッフの時給よりも外国人のほうが安いのは暗黙の了解だったという。
ケントさんは普段、どんな情報に接しているのだろうか。私が尋ねると「ひろゆきさんや、ABEMAのニュースです」という答えが返ってきた。
ネット掲示板「2ちゃんねる」開設者のひろゆきさんの意見を聞いたり、ネットテレビ局「ABEMA」のニュース番組を見たりすると、独自の視点に気づかされることがあるという。
正直、ひろゆきさんも、ABEMAによるニュース番組も、私が共感できない意見や主張の多い人物、番組のひとつではある。最近の沖縄・辺野古新基地建設に反対する「座り込み」をめぐる主張や報道ぶりをみていると、「冷笑主義」と「逆張り」もついにここまで来たかという嫌悪感しかない。ただどんな主張に共感するかは、それぞれの自由だろう。
自分は何のために生まれてきたのか
日本人の賃金が上がらない原因について言うなら、ケントさんの指摘には一理ある。しかし、それは外国人労働者のせいではない。悪いのは、外国人を不当に安く使う企業であり、そうした状況を放置してきた国の政策だ。
私がそう指摘すると、ケントさんは「たしかに外国人も被害者ですね」とうなずく。ケントさんは決してゼノフォビア(外国人嫌悪)ではない。
ケントさんは「困窮する未来しか見えない。自分は何のために生まれてきたのか。意味のない、必要のない、産業廃棄物みたいな存在だと感じます」と訴えた。
ひろゆきさんのTwitterフォロワー数は、「座り込み」に関する投稿が批判された後も増え続けているという。
悪質企業に抵抗することもできず、自らを「産業廃棄物」に例える若者が、日本有数のインフルエンサーに傾倒する。その現実を前に複雑な気持ちになる。
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