「発達障害かも」で退職促された27歳男性の謎 自身を「産業廃棄物みたいな存在」と訴えるワケ

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「前の会社のこともあったので不安もありましたが、働くからには今度こそ死ぬ気で努力してついていこうと思いました」とケントさん。しかし、再就職先は深夜までのサービス残業が常態化し、社員の入れ替わりも激しい会社だった。ケントさんも「体力的にきつくて、半年が限界でした」。

その後は実家に戻り、ハローワークや若年層の就労支援などを行う「若者サポートステーション」、地元の障害者職業センターなどに足を運びながら仕事を探している。この間、心療内科を受診。予想通り発達障害と診断され、昨年には障害者手帳を取得した。

「マルチタスクが必要な整備士は一番向いていない仕事だったんだと分かりました。納得した半面、これからどうすればいいんだろうと思うと不安です」

周囲は「挑戦」に否定的

現在はプログラマーとして働くため、独学で勉強しているという。発達障害の特性を考えたとき、プログラマーなら人間関係に煩わされることもなく、自分のペースで成果を上げられると思ったからだ。しかし、周囲はケントさんの挑戦に否定的だという。

障害者職業センターの担当者たちからは「プログラマーも急なトラブルに対応しなくてはならない大変な仕事」「もっと簡単で、ミスをしても怒られないような、のほほんとできる仕事のほうがいいのでは」と“アドバイス”された。同居している両親からも「プログラマーで食っていけるのか。もう若くないんだから早く働かないと」と急かされているという。

ケントさんは「じゃあ、どうしろっていうんですか」と苛立ちを露わにする。

「簡単な仕事っていうけど、それじゃあ給料が安くて1人暮らしなんてできませんよね。長く働くために、手に職を付けようと思って勉強してるのに。君には無理だから簡単な仕事をしなさいと諭されるばかりで……」

もう一度1人暮らしをしたいという夢を持ち、働く意欲もあり、努力もしている。それなのに勧められるのは自活もできない低賃金の仕事ばかり。自身の希望と社会的なニーズの乖離は絶望的に深い。

取材で話を聞いているとき、ケントさんがふいに持論を語り始めた。

「社会をよくするために、まずは投票に行くことだと思うんです。自民党の政治が続いていますが、もう何年も給料が上がってない。消費税は10%になったけど、税金の使い道は不透明ですよね。税金は上がるのに、給料は下がるという負のスパイラル状態。もっと日本人に優しい政治をしてほしい」

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