「物理って役に立つの?」と子どもに聞かれたら 身近なものの仕組みはすべて物理でできている
実は飛行機のジェットエンジンもこの原理を使っています。主翼の下に大きな筒状のエンジンがありますよね。正面から見ると扇風機の羽みたいなものが見えますが、あれはまさにコンプレッサーのタービンなんです。
あの羽で空気を後方にガンガン送って、空気を十分圧縮させたところに点火することでドーンと勢いよく前に飛ぶ。これがジェットエンジンの基本原理です。あの大きなエンジンの大部分って実はコンプレッサーなんです。
でも、まだ熱い気体がパイプに残っているという問題があります。それを解決するのが膨張弁。これは先ほどの図のBにつけます。その結果として、次の図となります。
膨張弁はコンプレッサーよりもずっとシンプルな構造のもので、一言でいえば小さい穴が空いているだけ。その小さい穴が空気を冷やすのです。気体の行き先をキュッと絞って、そのあとバッと広がるようにデザインされているのがミソです。
わかりやすいイメージは風船。風船から空気が抜けるとき、風船の穴を通った瞬間にワーッと広がっていきますよね。「ああ、ようやく解放されたぁ!」みたいに。あの空気って冷たくありませんか? このときに気体は圧力が下がって解放されて膨張していくのですが、温度も下がるのです。
小さい穴を使って気体を膨張させるだけで気体を冷やすには十分。そうやって冷やされたガスが、また室内の熱交換器を通って室内の熱を奪うということをやっているんです。
以上がエアコンの基本的な動作原理です。理屈がわかれば意外と簡単でしょう。
最近のエアコンは気体だけではなく液体も使っていろいろと複雑なことをやっていて、大学レベルの物理を使っていますが、実は気体だけでエアコンってつくれるんです。また、こうして熱を汲んで別の場所へ運ぶ装置を「ヒートポンプ」と言います。
物理はあらゆる自然科学の土台になる
なぜエアコンと室外機が一体化できないのかという疑問もあるかもしれません。将来はあっと驚くアイデアが生まれるかもしれませんが、基本的に部屋の中と外に1台ずつ必要ですね。
それと、先ほど言いましたがエアコン本体と室外機って機能は基本的に同じです。今は冷房の話だったので図の左側を室内という設定にしましたが、暖房のときは右側が室内になると思えばいいんです。
暖房だと室内に暖かい空気が出て、屋外には冷たい空気が出ますよね。実際は気体を逆回しすればOKです。
このように、偉大な物理学者たちのおかげで身の回りの法則はかなり解明され、便利なものがたくさん生み出されています。
その基本的な考え方が詰め込まれているのが、中学、高校で習う物理の基礎知識です。物理は自然界の原理原則を追求する学問だから、あらゆる自然科学の土台になります。工学や化学、地学、天文学なども全て物理を使います。つまり、物理というものは、実はとても人生に役立つし、その後の人生が「知的リッチ」になる。そう私は思います。
この物理という学問の魅力を1人でも多くの人に知ってもらえればうれしい限りです。
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