玉川徹、谷原章介「#テレビに出すな」騒動の是非 正当か行き過ぎか、ネット上の罷免運動の危うさ

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もともと罷免運動のようなハッシュタグそのものが脅迫に近いニュアンスを含んでいますが、これらは危険な出来事の発端になりかねないものであり、暴力的なムードを感じざるを得ません。世間の人々を武闘派に誘うような危うさを感じさせるだけに、「『それはどうなのかな』などと冷静に考えられるか」が問われているようにも見えます。

その他にも、「今回の件ではなく、コロナに関する無責任な発言が酷かったので、降板させるべき!」という“別件逮捕”を思わせるものや、「社会に多大な損害を与えた」などと断定するようなツイートもありました。これらのツイートはいずれも、「根拠が不十分な発言」という意味では、玉川さんのものと似たところがあり、そこに正当性はないでしょう。

批判のブーメランは自分に向かう

では、「今回の玉川さんと似たように根拠が不十分な発言をしている人が少なくない」という事実は、何を意味するのでしょうか。

それは「ネットにおける罷免運動のようなものが、メディア出演している人や地位の高そうな人だけではなく、いつ誰に向けられるかわからない」ということ。人々が批判するうえでの基準にしているのは、「多くの人々が集まって叩きやすいようなことをしたか」であり、地位や収入などの前提が必要というわけではないでしょう。「いつ誰に矛先が向けられるかわからない」という生きづらいムードがどんどん濃くなっているのです。

深く考えずに書き込んだツイートが、いつか自分や自分の大切な人に向かってくるブーメランになるかもしれません。たとえば他人を処罰するようなツイートは芸能界にとどまらず、企業、学校、地域や趣味などのグループなどの身近なコミュニティにも及び、互いの小さなミスを監視し合うことにもつながっていくでしょう。つまり、他人への処罰感情が世の中に蔓延すると、自分の周囲にもブーメランが向かってくるリスクが高まってしまうのです。

そもそも罷免運動のようなハッシュタグでツイートしている人々が、「『羽鳥慎一モーニングショー』や『めざまし8』を見ているのか」と言えばあやしいところ。少なくとも熱心な視聴者ではないでしょうし、もしネットニュースを見て批判しているだけなら、自分の生活への影響はほとんどなく、どうでもいいことのはずです。

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