「裸のムラ」が描く車中泊一家に流れる忖度の空気 自由な生き方に見える家族が抱える大きな問題

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━━すこし気になったのは、活発そうに見えるユイちゃんが近所の子供たちと遊んだりする場面がなかったことです。

それは近くに友だちがいないからですね。彼女は学校から帰ってきたらお父さんが仕事をしている傍で日記を書いて、終わったら外に出て遊ぶ。中川さんたちがいるのは過疎地で、彼女が行っている小学校も再編統合でなくなるかもしれない。

━━それで、ユイちゃんは中川さんのバックパッカーハウスに滞在する秋葉さんたちと犬を連れて散歩したり遊んでいたりするのですね。

そういうことです。彼女はああいうふうに新しくバンライファーのひとが来たら、すぐになついて遊んでいます。近くに友だちがいないぶん、中川さんも仕事が片付いたら一緒に遊んだりする。ほかの父親だとなかなかできないことですよね。

バックパッカーハウス
秋葉さん夫婦と遊ぶユイちゃん(写真提供:(C)石川テレビ放送)

僕は最初見たときに、ユイちゃんは伸び伸びしていて、天真爛漫な子だと思っていました。だけど、取材をつづけていると、これは中川さんが縛っているのではないか。ユイちゃんが中川さんの顔色をうかがうところも見えてきたりして。だからすこしずつ捉え方が変わっていきました。そこは映画で素直に見せています。

妻と夫で教育方針にも違い

━━中川さんのことを、妻のユカさんが「不器用なひとだから」と説明する場面があります。近所のオバチャンたちと挨拶するのがなかなかできなかったという。意味のない会話をするのが苦手で、という話をされているのが印象に残りました。

映画の撮影が終わってから、中川さんのところにいって一回飲んだんです。そのときにご家族も来られていて、ユカさんと口論になる。それをまた僕が撮ってたんですけどね。同じことを続けている。それで、ユカさんがテレビ版のほうを見られたときに、彼女から『五百旗頭さん、ありがとうございます』と言われたんです。

━━何に感謝されていたんですか?

中川さんがあれだけユイちゃんに対して、日記書け書けと言っていたのに、『パパできたよ。見て』と言われても、スマートフォンをいじっていて振り向かない。映画では終盤のシーンです。振りむいたと思ったら『ああ、すごいじゃん』とスマホに戻る。ユカさんは『あれがイクちゃん(中川さん)なんですよ。よくぞ出してくれました』と言われました。

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