宗教2世770人の本音、「信仰を強制される」苦痛 「精神的な虐待」が多数も、放置される現実

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しかし、「外形的に見える部分」へすらも介入できていないケースがあるのが現状だ。当事者や支援者らによると、2世が公的機関に被害を相談しても「宗教の問題には対応できない」「家族に相談するように」と門前払いをされる例があるからだ。

「2世の人たちが、育児放棄に遭ったり、経済困窮に陥ったりしていても、行政や警察は『宗教の問題だから』と立ち入ろうとしない。だが、児童相談所の仕事は家庭の中に入ることだから、信教の自由があるからといって、ひるむ必要はない。宗教に対する知識不足や誤解が、さまざまな不幸を生んでいる」(南野森教授 インタビューはこちら

宗教法人や親からすると、信仰の継承は重要だ。ただ、信仰に基づく教育が子どもの信仰への強制や人生の選択を制限するものになっていないかという点を議論する必要がある。

相談できる窓口が必須

本誌のアンケートでも、2世が感じる苦悩を解消するために必要なこととしては「社会的な支援・相談窓口の設置」が最も多かった。「教団・組織内部の改革」を求める声も次に多い。

2世支援に取り組む社会福祉士の松田彩絵氏は「2世は生まれながらに、教団以外の社会に頼るという選択肢がない」と指摘する。実際、アンケートでは、2世であることや、その悩みを相談できる人はいるかという質問に対しては53%がいないと答えた。

2世問題の解消のために必要なことは、教団内部の改革や社会的支援だけでない。「信者以外の周囲の宗教に対する理解」という回答も多かった。

「教団からは『不信仰な堕落した子』だとさげすまれ、外部の人からは『カルト宗教の一員』だと危険視される。自分の居場所がどこにもない」
「宗教に属しているというだけでマイナスイメージを周囲に持たれることに、強い疑問と疎外感を覚える」

「宗教とは無関係」と考える周囲こそが、宗教や当人を理解することが2世の生きやすさにつながる。2世が相談できる窓口を早急に設置し、信仰に関連した虐待被害であってもひるまず介入する行政の徹底した姿勢が求められている。

井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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