円形脱毛症であることが知られると、「原因はストレス性」という誤解から、「この人は心が弱いから、責任ある仕事は任せられない」と、それまでの役職や仕事から降ろされてしまうこともあるようだ。
「患者さんの多くは円形脱毛症であることを気づかれないように生活しています。派遣社員として働いて、周囲に気づかれる前に職場を替えるという人も。『やりたい仕事ができない』というのが大きな悩みになっている人は少なくありません」(植木医師)
円形脱毛症は一度発症すると、長い期間、向き合っていくことが多い病気だ。当事者とその家族の不安や葛藤、困りごとなどを分かち合い、情報交換の場となっているのが患者会だ。
患者会の役割は主に3つ
「特定非営利活動法人円形脱毛症の患者会」事務局長の山﨑明子さんによると、患者会の目的は主に「病気を知る」「病気の一般周知」「患者同士の交流」の3つだという。
「これらの目的を達成するために、患者さんや医師、サポーターたちが協力して、患者さんや家族向けのセミナー、医療相談会、親睦会、会報発行、患者さんの実態調査などのさまざまな活動を行っています」(山﨑さん)
もう1つの患者会「日本円形脱毛症コミュニケーション(JAAC)」理事長の平野隆之さんも、「Web会議を活用した交流会を2カ月おきに開催しています。多くの当事者やご家族のご参加をお待ちしています」と話す。
日本皮膚科学会の推計では円形脱毛症の患者は全国におよそ200万人。うち10%が重症とされるが、病院を受診していない潜在的な患者も多いとみられている。
「脱毛ぐらいで仕事を休んで病院に行けない、という人もとくに男性では多いですし、少しでも他の人に病気を知られたくない人も多い。患者会のWebミーティングはハンドルネームで参加可能です。当事者同士で有益な情報交換ができますので、ぜひ気軽に参加してみてほしいと思います」(植木医師)
(取材・文/石川美香子)
植木理恵医師
千葉県出身。1988年順天堂大学医学部卒業。同大学医学部附属順天堂医院皮膚科入局。91年英ロンドン大学王立医科大学院ハマースミス病院皮膚科。93年順天堂大学医学部皮膚科助手などを経て、04年順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター助教授。2018年より現職。専門は皮膚科一般、毛成長制御機構、円形脱毛症、びまん性脱毛症。
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