奈緒、多忙の中でも「これだけは大切に」と思う事 「スクリーンには俳優の生き様がすべて映るんだ」
樋口:お芝居と出会ったのも高校生の頃ですか? どういう形で出会ったのでしょう。
奈緒:当時、地元のモデル事務所に所属していた時に、東京から先生が来てモデルと演技についてのワークショップをやることになったんです。自分でお金を出すなら新しいことをやってみようと思って、演技コースを受けたのが出会いですね。
樋口:もともと俳優業に興味はあったんですか?
奈緒:興味はありましたが、女優を目指すと公言するにはすごく照れがありました。学校では目立つ存在ではなかったし、将来の夢に女優って書くメンタルはまだなくて。同じクラスのリーダー的な存在の子が、女優になりたいと言ってて、ああいう子がなるんだろうなって、自分の中で勝手に決めていた部分もありました。だから学校から離れたところで、お芝居と出会えたのは良かったなと思います。
樋口:奈緒さんみたいな方が学校にいたら、ものすごく目立つと思いますけど(笑)! じゃあ、ワークショップで芝居への気持ちが確信に変わったという感じですか。
奈緒:演技をしたら、知らない自分と出会って衝撃を受けたんです。自分ってこんなに大きな声出るんだ! とか(笑)。今でも自分の知らない部分がたくさんあって、もっと知りたいからお芝居しているような感覚なんです。
何者にもなれていない自分にもがいていた
樋口:幼い頃から吉田拓郎さんがお好きだったそうですね。世代が違いますが、どうして聞くようになったんでしょう?
奈緒:音楽は母の影響が大きかったです。私が小さい頃からキャンディーズやピンク・レディーみたいな昔のアイドルのビデオを見せてくれたり、フォークソングもよく聞かせてくれていました。その中でも吉田拓郎さんは自分に刺ささるものがあったんです。
樋口:お母様の影響なんですね。拓郎さんは大人になってからもずっと聞いていた?
奈緒:私は10代の頃は怖いものなしで、根拠のない自信で自分を奮い立たせていました。でも20歳で上京してから、ただ時間が過ぎていくような時期があって、何者にもなれていない自分にもがいていたんです。その時に拓郎さんの「今日までそして明日から」という歌の「♪今日まで私は生きてみました~」っていう歌詞が自分にすごく優しく響きました。 私たちは生きているんじゃなくて、“生きてみてるんだ”と思ったら、今日や明日するかもしれない失敗が怖くなくなってきて。魔法みたいなひと言だなって思いました。そこから毎日聞くようになりました。