奈緒、多忙の中でも「これだけは大切に」と思う事 「スクリーンには俳優の生き様がすべて映るんだ」
樋口:そうだったんですね。マリコは幼い頃から父親をはじめとした男たちに損なわれ、抑圧されてきた女性で、とても難しい役どころだったのではないかと思います。特に映画のイメージカットにも使われている海のシーンは、相当自分を追い込んで演じたのでは?
奈緒:確かに撮影が始まるまでは、“マリコ”になっていくことに心配はありました。でも実際に演じてみると、マリコの心の中にはシィちゃん(永野)の温かさだけがずっとあったんだなって感じたんです。虚しさに満たされて終わるはずだったマリコの隣には、それだけで満たさないよ! ってシィちゃんが輝いていた。だから海のシーンでも、原作を読んだ時ほど悲しい気持ちにはなりませんでした。
樋口:奈緒さん自身は映画やドラマに関わっていく中で、社会における男性の強さや女性の弱さみたいなものを感じたことはありますか?
奈緒:女性が生まれながらに背負うものは絶対にあると思います。男性との圧倒的な体格差や社会的な立場など。ただそれを悲観はしていなくて。自分のなりたい女性になっていくという選択はできるし、環境のせいで自由に生きられなくても、それと戦う権利もあるはずです。自分は、そういうことを悲しいと思わずに受け入れていきたいと思っています。
樋口:そういう中でもマリコの環境は壮絶でしたね。
奈緒:確かにマリコのような、世の中には何も悪くないのにすべての人の悪意を背負わされてしまうような境遇の女性もいます。それは性別だけではなく、家庭や家族の問題もあるし、非力な子供が大人から受ける力も計り知れないものがあります。この作品と関わる間も、そういうことと向き合って考えなくてはいけないなと思っていました。
演じる役は、自分に一番近い親友のような感覚
樋口:映画の撮影は何日間ありましたか。合間に他の仕事をやったりは?
奈緒:全部で20日間あって、私が参加したのはもう少し短い日数です。今回はマネージャーさんに他の作品を入れないでほしいとお願いしていました。
樋口:撮影している期間は、オフの時間も役を引きずったりするものですか?