障害者教育、国連が日本に突きつけた厳しい課題 「特別支援教育の廃止」など6項目について勧告

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さらに、障害当事者と関係者はジュネーブの議場で、建設的対話の様子を傍聴した。その数日前には障害者権利委員らにロビー活動を展開して、直接、窮状を訴えた。受審国の障害当事者と関係者が100人以上も議場に集まったのは建設的対話では初めてのことで、その熱心さは議場で話題になった。

一方、障害者権利委員からの質問に対する日本政府の回答は、終始、制度の説明にとどまることが多く、建設的対話になっていなかったことが印象的だった。

国連のインターネットテレビ
国連のインターネットテレビは日本語通訳で視聴が可能(写真:筆者撮影)

建設的対話の様子は国連のインターネットテレビで世界にライブ配信された。現在もアーカイブで視聴できる(1日目2日目)。

東京都内在住の五十嵐健心(けんしん)さん(19)も、今回ジュネーブ入りした。障害児が地域の学校で学べるよう就学や学校生活を支援するNGO「障害児を普通学校へ・全国連絡会(以下、全国連<代表長谷川律子>」の支援を受けて、障害のある子どもと家族3組が派遣された 。

知的障害児を排除している

健心さんはダウン症で、中度の知的障害がある。だが、「同年代の友達と学校生活を送りたい」と希望し、特別支援学校でなく、地域の小中学校へ通った。学校で同級生と同じ授業を受け、一緒に学校生活を送っていたため、健心さんは自分自身を障害者と思っておらず、むしろ、障害のある人との集いは避ける傾向があるという。母親の玉枝さん(59)は「学校に障害者がいなかったからではないか」と話す。

高校受験では、入試で必要なマークシート試験に答える練習を重ねて合格し、都立の商業高校に入学した。学校のにぎやかな雰囲気が好きで、同級生と一緒にいることが「とても楽しかった」と健心さんは振り返る。

「勉強が好きだから、大学へ行きたい」と情報処理が学べる学科を受験したが、小論文で 不合格となった。玉枝さんは「手の不自由な子どもは口頭で、目が不自由な子どもは点字でテストを受けられます。でも、知的障害の子どもには代替手段がありません。健心は抽象的な内容は苦手ですが、具体的な質問には選択式で答えることができます」と話す。

そこで、健心さんと玉枝さんは「地域の小中学校の通常学級で、障害のある子どもの就学を拒否しないこと」「知的障害児を排除している高校、大学の選抜制度を改めること」などを障害者権利委員へ訴えるため、ジュネーブへ向かった。

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