私が長年お世話になり、老年精神医学の師と仰いでいる竹中星郎先生は、「認知症は欠落症状に対する自分の人格の反応」だとおっしゃっています。
何か物を置き忘れたという欠落症状が起きたときに、もともと自分に厳しい性格の人であれば、「何でこんな失敗をしてしまうのだ」と落ち込むでしょう。また、他人に対して厳しい人であれば、「人が盗ったのではないか」と誰かを責めるかもしれません。もともと性格が温和な人であれば、物がなくなってもさほど気にしない可能性もあります。
このように、認知症になるとその人個人の個性が発揮されます。だからこそ「認知症はかかったら終わり」の病気ではなく、「自分の個性がより強調される症状が起こる」ということを、忘れないでほしいと思います。
会話を増やせば認知症予防になる
どんな人がアルツハイマー型の認知症になるのか。それは、遺伝的要因が非常に大きいようです。もし親がアルツハイマー型認知症になった場合は、その子どもも同じ認知症になりやすいといわれています。
なお、頭を日ごろから使わない人ほど、認知症になりやすいのは確かなようです。認知症にかかっていた患者さんたちを比較してみると、日ごろから頭を使っている人のほうが認知機能テストの点数が高いのもよくある話です。
では、「何が一番頭を使っていることになるのか」というと、最も効果が高いのは他人との会話です。会話は、相手の言ったことを理解し、瞬時になにかしらの反応を返さなければならないという非常に高度な知的作業なので、強制的に頭が回転するのでしょう。
声を出すこと自体にも、ボケ防止の効果があるように感じます。私の担当するアルツハイマー型認知症の患者さんに、長年、趣味として詩吟を続けている方がいるのですが、常に声を出すことが習慣づいているせいか、認知症の症状の進行が非常に遅いのです。詩吟ではなくても、カラオケや合唱など、声を出す趣味を持っておくことは、ボケ防止の良い手段になるかもしれません。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら