和田秀樹「脳トレは認知症予防にならない理由」 認知症の進行を遅らせるためにできること

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発表した時点ではすでに会話にも支障が出ていたようなので、少なくとも発症から5年以上経過していた(その後の経過や93歳まで生きたことを考えると進行の速いタイプではないはずです)とすると、大統領の在任中もすでに認知症による記憶障害は起こっていたでしょう。

しかし、レーガン大統領は、認知症を患っていたであろう期間もアメリカ大統領として采配をふるい、歴史的な業績も残しています。言い換えてみれば、アルツハイマー型認知症であっても、大統領としての任務をこなせるだけの知力は残っていたということです。

認知症で「個性」が浮き彫りに

70代や80代になると、かなりの確率で誰の脳にもアルツハイマー型認知症の傾向は見られます。

数年前に、『渡る世間は鬼ばかり』『おしん』などで知られる脚本家の故・橋田寿賀子さんが「アルツハイマーになったら安楽死させてくれ」と発言して話題になりました。当時の橋田さんは90代でしたが、90代の方の6割以上がテスト上は認知症を発症しているので、もしあの発言があった時点で橋田寿賀子さんに記憶力テストをしたり、脳の画像診断を行っていたら認知症との診断が下った可能性はゼロとはいえません。

でも、晩年まで脚本家として活躍した橋田さんの業績を見てみても、彼女が持っていた作品を作り続ける素晴らしい創作能力に変わりはなかったことがわかります。現実には認知症にあたらないと考えるのが自然です。

このように、一言で「認知症」といっても、多くの方が思うよりも個人差の大きなものだし、病気の進行具合も変わってきます。

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