ただ、同じことを日本人がやっても意味があるのかというと、はなはだ疑問が残ります。日本人の食生活が欧米化していることは間違いありませんが、肉を食べる量ひとつ見ても、日本人と欧米人でその量は大きく変わります。
死因にしても、日本人の三大死因はガン、心疾患、脳血管疾患。それぞれの割合は、ガンが31%、心疾患は15%、脳血管疾患が14%といわれています。ガンで死ぬ人が心筋梗塞で死ぬ人の12倍います。心筋梗塞で死亡する人の割合が欧米に比べると少ない状態で肉食をやめたところで、それほど影響があるとは思えないのです。
60代以降の日本人が肉を食べるメリット
60代以降の日本人にとって、肉食はむしろさまざまなメリットがあります。まず、高齢になると、気力の落ち込みや意欲の低下が進む傾向にあります。その理由の一つは、たんぱく質不足だと私は考えています。人間の精神状態を安定的に保つために大切なのが、セロトニンという「幸せホルモン」です。
セロトニンが正常に分泌されていると、意欲が高まり、不安が弱まり、前向きな日々を送ることができます。でも、セロトニンは年齢とともに少しずつ減少していくので、本来は年齢を重ねるほどセロトニンが増える習慣を増やすべきなのに、日本ではその対策がなされていません。
では、どうしたらセロトニンを増やすことができるのでしょうか。おすすめしたいのが、しっかりとたんぱく質を摂ることです。セロトニンの原料は、トリプトファンというアミノ酸の一種です。このトリプトファンは豆や乳製品、肉や魚などのたんぱく質に多く含まれています。
肉はコレステロールを多く含み、動脈硬化や心筋梗塞の原因になるので健康でいたいなら食べないほうがよいといわれることも多いのですが、食が細くなる60代以降の人がセロトニンを増やすために肉を食べるのは、非常に理にかなっていると私は思います。
実際、80歳にして3回目のエベレスト登頂に成功した登山家の三浦雄一郎さんは、500グラムのステーキをぺろりと完食するなど、積極的に肉を食べているそうです。三浦さんの例は特殊かもしれませんが、一度はだまされたと思って、肉をしっかり食べて、気分の変化を観察してみてください。
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