中国人が「日本人キャンパーは憧れ」と熱く語る訳 空前のキャンプブームで日本ブランドに熱視線

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「農家楽」について、筆者は7年前に紹介した。大都市の若者が、多忙で疲れ切る日常生活を離れ、近郊の農家(民宿)で友達や家族と悠々自適の週末を過ごす小旅行のことである。「清潔・自然・癒やし・秩序」のある日本の地方に行きたがる理由は、この「農家楽」のアップグレード版に当たるものだ。

コロナ後、中国人は海外に行けなくなり、普通の農家楽も閉鎖したので、その代わりとしてキャンプが爆発的に人気になった。それまでの「癒やしの活動」とは違う楽しさも認知され初め、「農家楽」→「日本地方」→「キャンプ」と関心が移っていったのだ。

「今までとは違う楽しさ」とは、「社交によい」ことで実に興味深い。よく知られているように、中国人は生活する地域・生まれた年代により、価値観から行動まで大きな違いが生じている。その結果、小さい頃から一緒に似たような環境で育ってきた幼馴染や、成人後知り合った相性のよい友達とでなければ、人口の多い大都市に居ても心を許せる「場」を見つけるのは難しい。

加えて、職場はハングリー精神にあふれ、チームワークより個人貢献が称賛されるので、自然に他人との競争意識が高くなる。このため、仕事以外では何らかの「緩い」「ほっとする」「楽しい」つながりを求めるようになっているのだ。

「クローズド」な集まりが人気に

こうした中、中国人の若手エリートには、経済的に余裕があり、教養もそこそこあり、かつ一緒にスキルアップして楽しめるところが好まれるようになった。実は超高級ホテルの招待制ジム、名門小学校親同士限定の野球クラブ、経営者ママ友達が貸し切る華道教室などなど未公開のグループはこの数年北京や上海でじわじわと成長している。

安さんが参加した会員制キャンプ場では、それらと同じく、「厳選」された経済的に余裕がある人たちは、安心して一緒に余暇を楽しむグループを求められるわけである。

いい社交の場である以外で、安さんやほかの中国人キャンパーになぜこんなにキャンプにハマったかを聞くと、「達成感」「子ども」もキーワードとなる。

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