永野芽郁、「うるせぇ、クソが」とぼやく役を演じて 「マイ・ブロークン・マリコ」で見せた新境地

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(撮影:長田慶)

完全に自信を失っている自分がいた。しかし、これを他の人が演じているのを見るのも悔しい。そんな葛藤を抱え、タナダユキ監督 に、「本当に無理かもしれません。できる気がしないんです』と相談を持ちかけた。

「そうしたら監督は、『え?芽郁ちゃんしか考えられないから大丈夫、絶対できる」って。説得でもお世辞でもなく、ただまっすぐ言ってくださって。背中を押されましたね」

すべてを受け入れ一緒に乗り越えようといってくれたタナダ監督に、ついていきたいと思った。そうして、かつてないほどワイルドな役作りに取り組んだ。

例えば、やさぐれた物の食べ方、タバコの吸い方を研究した。実際、クランクインするまで3、4カ月くらい、実際に喫煙者(ニコチンやタールが入ってない特殊なモノを喫煙)になった。

「朝起きて吸う、ごはん食べて吸う。日常的に喫煙していましたね。とにかく自分の体になじませるべく、持ち方、吸い方、タイミングなどから勉強しました。劇中で着用していたドクターマーチンは、撮影の11カ月前から履き続けました」

一筋縄ではいかない役に挑戦することで、彼女は新たな境地を手に入れていった。

「これまで演じてきた作品は、私の中で全部つながっていくと思っています。今回の作品に挑戦してみて、『怖いな、恥ずかしいな』というネガティブな感情がなくなりました。挑戦したことすべてが、次につながる経験をさせてもらいました」

今までにない、感情のままに泣き叫ぶという、豪快な演技も体得した。中でも、包丁を片手に単身“敵地”へと乗り込み、マリコの遺骨を奪取するシーンは、忘れられないシーンだという。

©2022 映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会

「マリコの父親にナイフを突きつけるシーンは、とても緊張しました。原作のコマも見て、『こんな表情作れるかな。ドスの効いた、でも核心をつくような声を出せるかな』って。本当に緊張していてガタガタ震えながらやりました。

でも、そのシーンをやったときに、現場の空気も変わりましたし、私自身もシイノという人をようやくつかめた気がして。またひとつ演技にギアが入りましたね」

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