テレビはZ世代とシニア世代をどう繋ぎ止めるか 上も下も幅広く家族で視聴できる番組に活路

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また、コア視聴率に舵を切ったため若い世代向けのコンテンツが多く制作されましたが、どれもヒットに結びついていないのが現状です。それは制作側が「若い人たちは同世代の若い人を見たい」と勝手に思い込んでいるからでしょう。

昨今、ニュース番組などで若いコメンテーターが増えていますが、視聴者はあえて経験値の低い若い人の話を聞きたいでしょうか? しかも若い世代の感覚をきちんと研究しないまま番組が制作され、ポイントがズレてしまっていて、結果としてZ世代もシニア世代も見ないという状況が生まれてしまっています。Z世代に人気のTikTokでは、おじさんティックトッカーがブレイクしていて、若い世代も経験値のあるおじさんの話を聞きたいと思っています。

新しくて懐かしい世代を繋ぐファミリー番組に活路を

そして、「ファミリー」というもう1つのキーワード。先日「ダウンタウンvs Z世代」(日本テレビ)という番組が話題になりましたが、これが1つの正解だと思いました。つまり、上の世代も下の世代も幅広い世代が家族で視聴できるような番組です。

Z世代は親世代とも仲が良く、例えば映画『シン・ウルトラマン』や『トップガン マーヴェリック』は親子で見にいくケースも多かったといいます。親世代はノスタルジーを感じ、Z世代は新しさを感じるコンテンツが一番効率がいいということです。コロナ禍にTikTokで流行った山下達郎や竹内まりやなどのシティポップもその例で、そういった番組をもっと作っていく必要があると思います。

またサービス面では、TVerをいまだに見逃し視聴と考えているテレビマンが多すぎます。データからもZ世代にとってはスマホが第一です。スマホ上ですべての番組が視聴できない、1週間しか見逃し視聴ができないサービスでは、ネガティブに捉えられてしまいます。民放各局は個別に動画配信サービスに取り組んでいますが、はっきり言って非常に愚かな施策だと感じます。スマホでアクセスできるプラットフォーム上に全番組が視聴できるサービスを早急に作る必要があります。

そうすれば、もちろんチャンスはあります。地上波テレビのクオリティはまだまだ高いですから、スマホで好きなときに、好きな場所で、好きな人と、いつでもテレビ番組が視聴できるとなれば、Z世代ももっと視聴します。一方で、いつまでもそうしたサービスができなければどんどんテレビから離れていってしまうでしょう。(談)

原田曜平(はらだ・ようへい)広告業界で各種マーケティング業務を経験した後、2022年4月より芝浦工業大学教授に就任。信州大学特任教授、玉川大学非常勤講師。BSテレビ東京番組審議会委員。専門は日本や世界の若者の消費・メディア行動研究およびマーケティング全般。「さとり世代」「マイルドヤンキー」「Z世代」「伊達マスク」などの言葉の生みの親。

インタビュー・構成/西川博泰

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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