テレビはZ世代とシニア世代をどう繋ぎ止めるか 上も下も幅広く家族で視聴できる番組に活路
地上波の次に利用率の高いBS放送は、夜帯の時代劇や映画、ドキュメンタリーが視聴されています。一方で、テレビ録画もプレゼンスが減ってきて、録画してまで視聴したい番組が少なくなっているとも言えます。利用率ではGoogle検索、Yahoo!検索が次に続きます。高齢者も約3割が検索していることがわかる。そしてユーチューブは高齢者の25.7%が使っています。これはテレビにとってはかなりの脅威でしょう。
特に、団塊世代は定年退職の間際にPCに触れているので、デジタルとの親和性がギリギリあります。ユーチューブなどにも触れやすいことから、令和の時代はよりテレビ離れが加速する可能性があるということになります。また、各メディアの利用率はシニア世代の中でも、団塊世代を境にきっぱりと数値が分かれることもわかっています。
Z世代は必ずしもテレビを見ないわけではない
一方、Z世代のメディア利用を考えるうえで外せないのがSNSの存在です。フェイスブック以外のSNSは圧倒的にZ世代が利用しています。SNSはZ世代のものと言っていいでしょう。
ただ、Z世代のテレビの利用率も、中高年とあまり差がありません。「若者のテレビ離れ」と言われますが、この世代は実家に住んでいる率も高いため、テレビに触れている人はいまだに多いのです。ただし、中学3年生でスマホを持つと徐々にユーチューブの利用率が高くなり、女性は高校生、男性は大学生ごろにテレビを上回っていきます。
次にテレビの視聴時間に注目すると、利用率は中高年とさほど変わらないものの、視聴時間が短くなることが明らかになっています。つまり特定のコンテンツだけを視聴するスタイルになっている可能性が高いと思われます。そうなると、コンテンツに多額の制作費をつぎ込める動画配信サービスに比べて、制作費が下がっているテレビは不利です。しかもそのコンテンツ選択はグローバル競争のなかで起こっているため、日本のテレビにとっては非常に厳しい状況だと言えます。
ただ実は、ユーチューブは夜帯しか視聴されておらず、それ以外の時間帯はテレビが強いんです。また視聴ジャンルを見ると、テレビではバラエティ、ニュース、国内ドラマ、アニメなどで、ユーチューブでは音楽(MV)、ゲーム実況、ユーチューバー動画と、視聴されるジャンルが異なることもわかっています。
シニア世代を切り捨て若者を狙う方針は再考を
テレビがシニア世代を繋ぎ止めるためのキーワードは、「シニア」と「ファミリー」の2つです。まず「シニア」についてですが、これまでさまざまなシニア世代にインタビュー調査を行ってきましたが、多くの人が「テレビはつまらなくなった」と言っています。それは当然で、事実としてシニア向けのコンテンツがテレビからどんどんなくなっています。
令和の時代にはかつてないほど高齢者の人口が多くなります。にもかかわらず、テレビ業界がシニアを切り捨てるかのような方針を示したのが本当に良かったのか、大きな疑問があります。
たしかに、平成の時代はシニア世代の消費が予想より伸びず、広告主が離れてしまいました。ただ、令和の時代は消費欲が旺盛なしらけ世代や新人類世代によって、日本で初めてアクティブシニア市場が生まれ、広告主がシニア向けに広告を打てば物が売れるという時代が来るかもしれないんです。世代別に貯蓄率を見ても、新人類世代やバブル世代は貯蓄率が低く、お金を消費している。だからこそ、高齢者切り捨ての(に見える)コア視聴率への方向転換はまったく時代に合っていません。
これから消費欲が高い世代が高齢者になることを考えれば、人口が多いところにマーケティングするのが王道です。むしろなぜ簡単なことができていないのか不思議なくらいで、迷走しているようにも感じます。Z世代はゆとり世代に比べて消費するとはいっても、インスタ映えするカフェに行く程度で、クルマを買ってくれるわけではない。消費欲も高い世代を切り捨ててZ世代を狙っていくのが本当にいいのか。改めて方針を検討する必要があると思います。
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