サッカー日本代表欧州組を支えるキーマンの素顔 クラブと信頼関係を構築、選手ケガ状態を共有

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クラブとの関係作りに加え、重要なのがメディカル面のサポートだ。欧州オフィスにはメディカルルームが設置され、代表活動前などに訪れるトレーナーが選手個々の治療やケアに当たっている。

デュッセルドルフ在住の田中碧や吉田麻也(シャルケ)を筆頭に、負傷離脱中の板倉滉(ボルシアMG)、浅野拓磨(ボーフム)らは頻繁に訪れている模様。デュッセルドルフはご存じの通り、欧州屈指の日本人街で、ドイツ国内はもちろん、オランダ、ベルギー、フランスからも容易に行き来できる。同エリアにいる日本人選手にとっては「駆け込み寺」のような存在と言っても過言ではないのだ。

「自分のような現場に近い人間だと選手も話しづらい部分があるだろうが、津村には家族や生活面の相談もできる。異国での暮らしは日本にいる時にように行かないことも多い。そこで心身ともにサポートしてくれる人間や拠点があるのは本当に心強いと思う」と協会の反町康治技術委員長も強調していた。

この環境があれば、クラブとのメディカル的な情報共有も可能になる。現在、W杯出場が微妙と言われる板倉と浅野も驚異的回復が期待できるかもしれない。かつてシャルケ時代にひざを負傷した

内田篤人(JFAロールモデルコーチ)がドイツで治療方法に悩み、最終的に日本で手術に踏み切りながら、その影響を長く引きずるという出来事も起きたが、そのようなアクシデントを未然に防ぐ意味でも、欧州オフィスと津村氏の存在は不可欠と言っていい。

デュッセルドルフで2試合した意義

カタールW杯2カ月前という重要なタイミングだった今回、デュッセルドルフで2試合を実施でき、主力選手の移動負担を最低限にとどめることができたのも朗報だ。今後は欧州での代表活動も増えていくと見られるだけに、自治体やクラブと良好な関係を維持できれば、施設や人的支援も期待できる。協会側もスタッフの増員などに踏み切りやすくなる。将来への布石という意味でも、オフィス開設と試合開催の意味は大きかった。

彼のような裏方の支えを力にして、日本代表はカタールW杯本大会でベスト8入りに挑むことになる。エクアドルにあれだけ苦戦している現状だと、W杯優勝経験国のドイツやスペインを下すのは至難の業だが、ラスト2カ月間で日本サッカー界の総力を結集させて、高みを目指し続けていくしかない。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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