北海道・紋別「アザラシ救助隊」の過酷な救助現場 可愛くても野生動物に近づいてはダメな理由

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痩せたアザラシ
保護されたアザラシ。背骨や腰骨が浮き出て見えるほど痩せていることも、保護が必要かどうかを判断するひとつの指標となる(筆者撮影)
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羽田から飛行機で2時間弱の北海道紋別市。ここに日本唯一のアザラシ保護施設「オホーツクとっかりセンター」があります。そこで10年にわたり保護活動をしてきた岡崎雅子さんの新著『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』を一部抜粋し再構成のうえ、活動を通じて見えてきたアザラシの抱える問題についてお伝えします。アザラシの保護活動はどのように行われているのでしょうか?

突然の保護要請

保護要請は突然やってくる。ただ、要請が多い時期はある程度決まっているので、なんとなく心の準備はできている。その時期になると、電話を受けるのに少し緊張したりもする。もっとも保護要請が多いのは春先、3月末から5月の中旬ごろだ。

この時期は主に生まれて数週間のアザラシの子どもが保護される。オホーツク海に生息しているアザラシは、流氷の上で生まれる。アザラシの子育て期間は一般的に短く、ゴマフアザラシは生後2~4週間、ワモンアザラシは生後6~8週間で親から離れ、独り立ちしなければならない。

独り立ち前に母親とはぐれて迷子になってしまった赤ちゃんアザラシや、独り立ち後に餌の魚を上手く獲れずに痩せてしまったり、ケガをしたりして弱ってしまった幼獣が、海岸に打ち上がり、運良く人に発見されると、とっかりセンターに連絡が入る。

次に要請が多いのは、秋から冬にかけてである。10月末くらいになると、夏のあいだ、北へ回遊していたアザラシたちが南下して、紋別港内でも野生のアザラシを見かけるようになる。この時期は紋別沖でサケなどの定置網漁が行われているので、混獲された個体が保護されることがある。

また、12月に海が荒れると、ケガをしたアザラシの保護要請が入ることもある。1月に入り、流氷が近づいてくるとアザラシたちはそちらへ移動するようで、港内ではあまりアザラシを見かけなくなる。流氷が去り、春になると、再びその年生まれの子どもの保護が始まる。

保護要請が入ると、とっかりセンターには一気に緊張感が漂う。飼育員は二手に分かれ、一方は通報者に現場の状況を確認する。

発見場所・アザラシの大きさ・毛の色や模様の有無・動いているか・威嚇はするか(「カッ」と鳴きながら大きく口を開けて咬みつこうとする。イヌのように唸り「ヴ~…ワン!」と鳴く子もいる)・ケガをしているか・カラスやキツネといった天敵が近くにいるかなどを確認したあと、必要と判断すれば現場の様子を見に行く準備をする。

数は少ないが、通報されるアザラシのなかには、ケガをしているものの元気に海を泳ぎ回っているなど、保護の必要がない場合もある。

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