気候変動の最大の原因は、化石燃料を燃やした結果、大気中に蓄積された二酸化炭素だ。その分子は何世紀にもわたって大気にとどまるため、気候変動の責任を明らかにするには長期の累積排出量に焦点を当てることが欠かせない。
1850~2020年の期間に化石燃料の燃焼に起因する二酸化炭素の累積排出量は1.69兆トンに達したが、その24.6%は米国によるものだ。世界人口に占める米国の割合(4.2%)を大幅に超過する排出量である。米欧日など高所得国の合計累積排出量も全体の58.7%と、世界人口に占める割合(約15%)をはるかに上回る。
これに対し、パキスタンの累積排出量は全体の0.3%でしかなく、世界人口に占める割合(2.9%)よりもずっと小さい。米国をはじめとする高所得国が「気候被害の純輸出国」となる一方で、パキスタンなどの低・中所得国は不本意にも、その「純輸入国」になっているということだ。
高所得国は応分の負担を行うべき
歴史的な責任の査定においては、国連気候変動枠組み条約が採択された1992年を出発点とすべきだという意見もある。だが時間軸を変えたところで、結果はさして変わらない。92~20年の累積排出量に占める高所得国の割合が46.9%なのに対し、パキスタンのそれは0.4%にすぎない。
どちらにしても高所得国は、気候変動への適応、危機対応、復興にかかる費用について応分の負担を行うべきだ。被害を受けている低・中所得国は、現在の気候変動の原因とはほぼ無関係なのだから。
途上国世界は、高所得国が中心となって気候災害の原因をもたらしたという事実を忘れることはないだろう。その損害は急速に拡大しており、気候正義を求める世界の要求はこれからも、どんどんと強まっていく。
(C)Project Syndicate
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