手取り9万8千円で働く「図書館司書」の悲痛な叫び 7割超が非正規職員の現実、待遇求め署名活動

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また、(2)最低賃金2000円にも理由がある。

「非正規図書館員の勤務時間を仮に1カ月18日、1日7時間(126時間)とすると、時給2000円で25万2000円になります。いろいろな税金が引かれることを考えると、手取りがおよそ20万。これは一人で自立して生活するための最低ラインだと考えます」

滝本さんは、「図書館の仕事は楽しい」という。もともと本が好きで飛び込んだ世界だったが、仕事にはやりがいを感じている。図書館で働き続けるために、正職員に応募してみようと思うが、少ない募集に対して大勢が殺到し、多い時は数十倍もの「激戦」となる。

「実力だけでなく、運がないと正職員にはなれそうにありません。今後、待遇が改善されないようなら、図書館の仕事を続けることは難しいと思っています」

女性は今年度中にも集まった署名を政府に提出するという。

激増した図書館の非正規職員

日本図書館協会の統計によると、最も正職員が多かったのは1998年で、1万5535人だった。しかし、2020年には9627人まで減り、62%も減少している。

その反面、増え続けてきたのが非常勤・臨時職員だ。1998年と2020年を比較すると、210.3%も増加している。図書館員のうち、実に76.6%が非正規職員が占めている状態だ(2020年時点)。

なぜ図書館で非正規職員が増え続けたのだろうか。その背景を、公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)の渡辺百合子代表はこう説明する。

「元々、図書館では、祝日開館や夜間開館に対応するため、また、新規に開館する図書館職員を確保するため、非正規の臨時職員を大勢雇用していました。

臨時職員の導入は、正規職員も、当面の人員を確保するという目的で賛成してきました。臨時職員の待遇については、当時は扶養の範囲内で働く主婦が大半であったこともあり、ほぼ問題にはなりませんでした。

1990年代後半からは公務員定数の削減から、苦肉の策として司書資格を持つ非常勤職員を一定数採用し、必要な司書数を確保する自治体が増えました」

これに対して、当事者たちから待遇改善の声が上がるようになったが、人員削減は厳しさを増し、2003年に企業などに図書館運営を委託する指定管理者制度が導入されると、図書館の民間委託を選ぶ自治体も増えていった。

「公務員の人件費削減が目的で導入となる民間委託では、そこで働く司書の待遇は、非常勤の給与体系がベースとなり、低待遇は拡大維持されました。また、1年契約の契約社員とされたことから、昇給がなく、低賃金は固定化されました。月給額は20年前とほぼ変わりません。今や図書館職員の76.6%は非正規職員です」

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