手取り9万8千円で働く「図書館司書」の悲痛な叫び 7割超が非正規職員の現実、待遇求め署名活動

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職場には、滝本さんと同じく会計年度任用職員の女性たちが働いている。滝本さん以外は結婚している女性がほとんどで、世帯収入は夫がメインという人たちだ。図書館の仕事だけでは経済的な自立が難しく、若い人が入っても辞めていくという。

滝本さんの生活も苦しい。実家には少ない手取りから食費などを入れているため、自由になるお金は決して多くない。

「服は基本的にユニクロで買った3セットを着回していますが、ユニクロを買えないときもあって、さらにプチプラ(安くてかわいい)なGUや、しまむらで買うこともあります」

お金がないときは、8枚切りの食パンを買って昼食にした。ゆで卵を潰してマヨネーズであえ、2枚分の食パンに挟んで図書館に持って行って食べた。

「1食60円か70円くらいですかね。外食は無理です」

ネット署名はもうすぐ5万人

滝本さんがネット署名サイトで、こうした現場の窮状を訴えようと思ったきっかけは、7月に新型コロナウイルスに感染したことだった。10日間の自宅療養でしっかりと休んで、やっと考える余裕が生まれたという。

「それまでは気づいていたけど、時間がなくて考えることができませんでした。休んでいる間に、日本図書館協会の調査で非正規雇用の割合を調べたりして、やっぱりおかしいなと思いました」

そこから資料をさらに調べ、8月7日に「私は最低賃金+40円・手取り9万8千円で働く非正規図書館員です。図書館の今を知り、未来のために署名をいただけませんか?」と呼びかけるネット署名を立ち上げた。

滝本さんが署名で訴えているのは次の4点だ。

(1)雇用年限の撤廃、(2)最低賃金2000円、(3)退職金の支給、(4)図書館員の研修充実と司書資格取得の全額補助

(1)雇用年限の撤廃について、滝本さんは、「経験のある図書館員が意に反して辞めさせられることのないようにしてほしい」と訴える。

非正規雇用職員の多くは、常に雇い止めの危機にさらされている。しかし、1年や2年で職員が変わることは、図書館や利用者にとっての影響が少なくない。

「たとえば、利用者の疑問や課題を解消できる資料を提供するレファレンスと呼ばれるサービスがあります。図書館の重要な役割ですが、司書資格があるからといって、すぐにできる仕事ではありません。何年も経験を積まないとできないものです」

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