メタバースが「車のデザインを変える」は本当か 開発手法が変わって「より売れる」デザインに

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デザインに関してもう1つ考えておきたいのは、「いいデザインだから、●●万円高い」とはならないことだ。

後述するが、メーカー視点ではデザインの意思決定を考えた際に、この点が大きな問題となる。この逆のパターンとしては、ガソリン車とハイブリッド車の関係がある。同じ車種でも「ハイブリッドのほうが高価だ」という認識をユーザーも持っているからだ。

予算(価格)、ボディタイプ、メーカーに関して、エクステリアデザインはそれらと絡み合う特性を持つ。予算との関係では、「予算内で比較検討する中で、もっとも好みのデザインの車種を選ぶ」という行動は違和感ないものであろう。

ボディタイプについては、ファミリー層の人が「ミニバンのデザインが好みではないので、スライドドアがないのは不便ではあるがSUVを選択する」といったケースだ。そしてメーカーは、“メーカー選択そのもの”にデザインの評価が、大きく影響してくる。

つまり、「ユーザーが自由に選べる要素」の中で、エクステリアデザインは最重要事項だといえるのだ。

Appleが変えたデザインの重要性

ほかの製品を見わたしても、デザインの重要性はここ10~20年ほどの間、増え続けている。それまでの機能性重視の志向が変わって、「デザインはよくなくても機能的」な製品のウケは悪くなっている。シンプルで無駄のないこと、洗練されていることが重視されている。

そうなったきっかけは、やはりiPodやiPhoneの登場であろう。筆者が最初に買ったスマートフォンはiPhone 4だったが、背面がガラスである点がスタイリッシュでカッコよく思えたものだ。

デザインの価値を大きく上げたApple製品(写真:satoko / PIXTA)

Apple製品のほかにも、バルミューダのトースターやダイソンの扇風機などが、デザイン性を押し出してヒットした。デザインは、重要なのだ。

しかし、いくらデザインが重要だといっても、「どのデザインが正解か」の問いに答えることは難しい。「もっとも売れるデザイン」はどれなのか、同時に「ブランド力を高めるデザイン」とはなんなのか。そこに正解はない。

ここからは、自動車のエクステリアデザインに絞って考えていこう。「①好みと感性」「②すぐに作れない/変えられない」「③ROIの計測が困難」という、3点から取り上げていく。

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