メタバースが「車のデザインを変える」は本当か 開発手法が変わって「より売れる」デザインに

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1つ目は「好みと感性」だ。燃費であれば、15.0km/Lより20.0km/Lのほうが優れているのは、誰の目にも明らかである。車内騒音も、静かに越したことはない。このように数値化できる要素ならば、比較ができる。

反対に、好みや感性から評価されるデザインは、「なんとなく好き」「直感で見てカッコいい」「なんかダサい」というふうに、測定するのが難しい。複数の車を並べて見せれば、まったく車に興味のない人でも、好き嫌いの評価はできるものだ。

「シエンタ」のデザイン検討スケッチ。さまざまな案から絞り込まれていく(写真:トヨタ自動車)

インターネットの評価サイトやSNS上でも「かっこいい/おしゃれ」「ダサい/古臭い」など、さまざまな意見が飛び交っている。しかし、どこをどう変えればより良くなるのか、より売れるのか。その正解は、わからないことが多い。

2つ目は「すぐに作れない/変えられない」だ。自動車の開発は、膨大な人・モノ・金を必要とする。

人気がないからといって、そう簡単には変えられない。マイナーチェンジでグリルなどのデザインが変わることはあっても、まるっきり違うデザインにはできないものだ。次のフルモデルチェンジまで、数年から10年以上となることもある。

デザインに予算はつけづらい

3つ目は「ROIの計測が困難」である点だ。ROIとは「Return On Investment」の略で、日本語にすると投資収益率、投資利益率となる。投資に対して、どれだけの利益を生み出したかを示す値だ。

ROIのわかりやすい事例の1つとして、広告キャンペーンがある。キャンペーンの前後での収益比較と、キャンペーンに費やした投資額から算出可能である。

もう1つの例として、カーナビ開発を考えてみよう。この場合、開発のために投資した額と、新型カーナビの装着率、その結果もたらされる利益額からROIを把握することができる。

それに対してデザインは、前述の通り「いいデザインだから、●●万円高い」という認識はユーザーにない。そのためROIの測定が難しく、メーカーはデザインのために予算をつけづらい。結果として、開発時に試せるデザインのパターンが少なくなってしまう。

前段が長くなったが、ここからようやくメタバースの出番である。メタバースの活用が、これまで見てきたエクステリアデザインに関する課題を解決してくれると考えられるのだ。デジタル空間での評価をリアルな世界にフィードバックする可能性を探っていこう。

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